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THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2



『ミズキ!!』

三日後。
瑞稀が重い身体を引っ張りながらも練習に来ると何人もの仲間が待っていて、瑞稀の姿を見るとすぐさま駆け寄ってきた。
ただ事ではないのが、顔を見てすぐに分かった。中には泣きそうな顔をしている人までいた。
駆け寄ってきた仲間たちに押しつぶされそうになりながらも、なんとか後ろにあるトランペットを守る。
体制を整えた瑞稀は仲間に声をかけた。

『・・どうしたの?』
『ミズキ、何で!?』
『何があったの!?』
『本調子じゃないんでしょ!?』
『そうだよ、それをちゃんとボスに言わないと!!』
『ミズキはよく頑張っているのに!』

一人の仲間が声を荒げると、次々と声を荒げていく仲間たち。その声に反応したのか、駆け寄ってこなかった仲間もじっと瑞稀を見つめていた。
いつもとは全く違った様子に、瑞稀も何が何だか分からない。

『ちょ、ちょっと、待って、何がどうしたの!?』
『だから!ミズキがメンバーから外されたの!!』
「・・・・え?」

思わず、日本語で聞き返してしまった。
否、聞き返したという類のものではない。その言葉が信じられなくて、不意に出た声だった。
考えてもなかった最悪の事態に、瑞稀の頭は真っ白になった。


『どうして!?ミズキは頑張ってるのに・・』
「・・っ!!」
『ミズキ!?』

瑞稀は身体のだるさも忘れて、突発的に走り出した。
目指すは指令を出したボスの部屋。ノックをすると、返答を待たずにドアを開けた。
そこには、瑞稀が乗り込んでくるのを分かっていたのか、来客用のソファーに座って部屋に入ってきた瑞稀を真っ直ぐ見据えるボスの姿があった。

『ボス!!メンバーから外れたって、どういうことですか!!』
『そのままの意味だ。ミズキ、キミをコンサートメンバーから外す。』
『どうして!!』

仲間の言っていることが事実と分かり、瑞稀は理由を問うた。
必死な表情の瑞稀に対し、ボスはさらに目を鋭くさせた。いつもとは全く違ったボスの雰囲気に、瑞稀は負けた。

『・・ここ最近の絶不調。先日のコンサートでの失敗』
『っ、それは!!』
『それだけではない!!』

言い返そうとした瑞稀の言葉を遮って、ボスは顔を険しくさせて言った。

『キミは、オーケストラを分かっていない。音楽家にとって大切なモノを分かっていない!』
『な・・!』
『・・・キミには、失望した』

その言葉を呟いて、立ち上がったボスは瑞稀の横を通り過ぎて部屋を出た。
上手くいかない歯がゆさに、訪れてしまった最悪の事態に、ボスの期待を裏切ってしまったことに、瑞稀はただただその場に立ち尽くした。



数日が経っても、瑞稀はメンバーから外されたままだった。
もう既に仲間たちは3つの公演を終わらせているのに、瑞稀は自主練に励む日々。
それにさえも、自分の大好きな音が出ず、むしろ掠れていくことに、瑞稀は苛立ちを隠せなかった。

「あぁ、もう!」

自主練用に使っている部屋で、一人声を荒げる。八つ当たりの矛先はついトランペットに向かいそうになるが、大事な楽器。そこをなんとか抑えて握りこぶしで机を叩く程度にしておく。
うまい具合にストレスが発散出来ず、苦労していると、ドアがノックされた。
ノックの音で苛立つ気持ちを逸らして、トランペットを安全な場所に置くとドアを開けた。
先にいたのは、エンディだった。

『どうしたの、エンディ』
『ミズキに差し入れよ。レモンティー、好きでしょ?』
『わ、ありがとう』

思ってもない好きなものの差し入れに、瑞稀は笑顔を零した。
そういえば・・とエンディが言葉を漏らすのを、瑞稀はただ首を傾げて聞いていた。

『この間、日本でコンサートをしたのだけれど・・特に彼氏から何か言われた?』
『・・どうして?』

コンサートの話になった途端に、元気を無くした瑞稀を見て言葉を撤回すべきかと思ったが、瑞稀の興味が彼氏に向いているとわかっているので、言葉を続ける。

『ミズキが出ていないからよ。彼氏なら気付くんじゃないかと思ってね』
『気付かないと思うよ。コンサートに誘わないし』
『・・ミズキ。もしかしなくてもアナタ、メンバーから外されたこと、話してないんじゃない?』
『・・・まぁ、そりゃあね。』

瑞稀の答えにエンディは自分の予想を突きつけると、やはり当たっていた。
元々、自分の事を話すことをあまりしないとはいえ、さすがに今回は話すと思っていた。
が、ここしばらくの瑞稀の様子で、気付いた。

ここ最近。メンバーを外れてからは、特に顔色が酷い。
最初は外されたショックだと思われて、仲間たちでもあまり触れないようにしていたのだが、どうもそれだけじゃない身体の不調も酷くなっているのが見て取れた。
瑞稀も、とうに自身の体調不良は自覚していた。
でも、絶対にメンバーに戻りたい瑞稀は練習を重ねて、自分の音や不調を取り戻すしかないと考えて、自分の空いている時間はほとんど自主練に当てていた。




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