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人妻苑―ひとづまのその―
【若奥さん 官能小説】

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初―うぶ―-6

 サイズの大きな紳士用の革靴と一緒に、それらはきちんとそろえられていた。レースの飾りの付いた黒いミュールだ。

 あの奥さんの足が、ここに──。

 紗耶香の映像、紗耶香の匂いを思い出しながら、ミュールを手に取り顔へ近づける。そして、べろっと舐め上げた。
 頭の奥に熱い痺れを感じるほど、その味わいはいつまでも舌に残った。

 たまらないよ、奥さん──。

 島袋は自分のいちもつをスラックスの窓から出して、そこにミュールの片方をかける。
 なんと卑猥な光景だろうか。さんざん犯されたあとの人妻の残骸が、強情なペニスにぶら下がって泣いているようにも見える。
 島袋の左手が動き出したのも、そういう錯覚からくるものであり、そこに男のロマンを思い描いていたのだった。
 紗耶香の履き物は、マスターベーションの手助けをする道具に変わり果てた。

 奥さんの中に、私の精子を吐き出してしまいたい──。

 先走った粘液をそこに塗り足し塗り足し、無我夢中で陰茎をしごきつづける島袋。
 自分はまだまだ男なのだと我が身をおだてて、紗耶香を犯しているつもりで自慰に没頭した。

 トイレのドアが開いたのは、島袋が射精を終えたあとのことだった。彼はその痕跡さえも拭うことなく、汚物にまみれたままのミュールに背を向けた。
 リビングに紗耶香の姿を見つけると、島袋の歩調がゆるやかになり、やがて立ち止まる。

「誰も来ないようなので、私、今日のところは帰ります……」

「それは残念だ。奥さんと二人きりで、もっといろんなお話がしたかったのに」

 島袋のおそろしいまでの余裕な態度に、普通ではない空気を感じる紗耶香。

 ここにいてはいけない──そう直感した。

 一呼吸ごとにおそってくる息苦しさに耐えかねて、紗耶香は逃げるようにして玄関へ出た。
 たぶん、この家を訪れたときと変わらない光景が、そこにあるはずだった。

 やだ、どうして私の靴が──。

 絶句した紗耶香の目の前には、白い液で汚れたミュールがあった。それに、見覚えのない脂ぎった指紋が靴のあちこちにこびりついている。

「何か困ったことでもあったのかね?」

 ポケットティッシュで靴の汚れを拭いていた紗耶香の背中に、島袋の野太い声がかかる。

「それは、その……」

 紗耶香は口ごもった。自分の身勝手な行動で人間関係にひびの入るようなことがあれば、それこそ夫に顔向けできない。

「帰られる前に、奥さんに言いたいことがある」

 こちらへ来てください、と島袋は意味ありげに言った。紗耶香がついて行くと、彼はトイレの前で待ち構えたあとに、ドアを解放した。

「見なさい」

 感情をおもてに出して、島袋は個室内を示した。


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