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〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

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〜吟遊詩(第三部†地図番号1750Z160・交錯される真実と虚像†)〜-1

体長5メートル87センチ。胴まわり92センチ。
もちろん、『人の』ではない。生物ではあるわけだが…
その驚くべき大きさと太さを誇る、生物は黄色い瞳をミノアールに向けた。ミノアールはその姿に圧倒される事なく、自分の目の前にある建物を見上げて
「サーペントさん、ここですか?」
と言った。大きな、大きな生物はヘビのサーペント。ミノアールとサーペントの目の前には教会が建っていた。
『シュー…』
サーペントは頷きながら独特な声を吐き出してミノアールに答えた。
「…ここが地図番号1750Z160…社長は教会に行って欲しかった?」
ミノアールは屋根の上にある大きな十字架を見上げた。
“インテリオキングダム、地図番号『1750Z160』に行け”
と、アダムに遣いに出されてから半月。サーペントとミノアールが見上げていた教会はユノの家であった。
「なんで教会なんか…悔いを改めよ、って意味だったりして。眠いとかボヤいてたから……」
ミノアールは元々 不健康そうな顔色をますます青くして呟いた。
(アホだな……)
ミノアールを横目で見たサーペントは呆れてそう思った。そしてミノアールを教会の入り口に促すべく、先立って進みだした。
「あっ!待ってください!サーペントさん…」
後ろから慌ててミノアールが追ってくる。
ミノアールより先に扉の前に着いたサーペントは頭で扉を押してみた。当然の事ながら、教会の扉には鍵が掛けられていて開かない。
「閉まってますか?」
すぐ後ろからミノアールの声がする。どうやらサーペントに追い付いたようだ。そしてノブに手をかけた。
━━………━
「開きませんね。神父さんはいないのかしら?」
押しても引いてもビクともしない扉を見てミノアールは首を傾げた。

(……かすかに生き物が焼けた匂いがする。これは…セナの匂いだ。ここはセナじじいの教会だったのか)
サーペントは鼻をピクピクと動かし辺りの空気を吸い込んだ。セナ…それはじぃちゃんの名前だった。
(アダムがここに来させた意味。それは…━)
「サーペントさん!」
深く考え込んでいるサーペントをミノアールが遮るように声を掛けた。煩わしそうにミノアールを見上げるサーペント。
(なんだよ…)
「開かないので帰りますか?」
(おいおい…(汗)その方がクビだぞ。はぁ〜口が聞けねぇフリすんのもめんどくせぇ事だぜ…)
サーペントは溜め息をつきながらミノアールの言葉を無視し、自分の体を覆う尾の方の鱗を一枚剥がした。チクッとする痛みがサーペントの体に走る。
「サーペントさん何してるんですか?鱗なんか剥がして…」
ミノアールはまるで自分が痛いかのように眉を歪めながら言った。 剥がされた鱗は七色に輝いていた。 サーペントはその鱗に自分の涎を落とした。毒であるはずのサーペントの涎に鱗は溶かされる事なく、これまた七色の光りを発し始めた。そして…
「えっ!?鱗の形が……!」
ミノアールは目を丸くした。 鱗が一瞬にして鍵の形に変わったからだ。
鱗は完全に形を鍵に変え、地面に横たわっている。サーペントはこの鍵で開けろと言うように、ミノアールを顎で使った。
「これを使えと…サーペントさん、あなたって何者なの??ってゆうか、これって不法侵入じゃないのかしら?」
(あぁ。この使いを受けてから不思議な事ばかり。ウチの研究所って大層なレベルだったのね…場所の変わる出口。物を創るへび。どーなってるの?)
本当に、一般人にしてみれば思考がついて行かないようなことだらけであろう。


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