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青影検査センター
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誘われた食事-1

ある日のこと向ヶ丘技師が葦野を食事に誘った。

「峰野鐘のレプリカだけで、君がこれだけ変化するとは正直思ってもみなかった。

とすれば益々君に研究の投資をしてみたくなったんだ。

君と私とは男女の違いがあるけれど、お互いレプリカ愛好者として共通に語るものがあるに違いない。

そこでどこまで分かってもらえるか自信がないが少し語りたい。

私は一種のフェチかもしれない。私は最初は乳房とか顔のレプリカを作ってみた。

でもそれは大きすぎるし色々模索した結果、耳にたどり着いたときがあったんだ」

「耳? ですか」

「そうだ。顔と同じく耳には個性がある。

そして顔が美しい人は耳も美しいことに気がついたんだ。

ところが耳だけではいくら時間をかけても卒業できないんだ。

結局それは途中の停留所に過ぎず、終着駅ではなかったんだよ。

そして僕は女性の秘所にもう一対の耳があることに気がついたんだ」

向ヶ丘はたぶんあの部分のことを言ってるのだなと、葦野は思った。

「初めは本人の耳との相関性を調べたくてサンプルを集めたんだ。

もしそれが分かれば耳を見ただけで、あの部分の形も推測できることになるからね。

でも残念ながらその両者には関連性がなかったんだ。

確かに耳が美しい人のあの部分の両翼は左右対称で整っていることが多いけれど、必ずしもそうとは限らない。

とても美人なのにその両翼の部分が左右アンバランスで、整形して直す例は珍しくないそうだ」

「えっ、あそこを整形するんですか?」

「外国ではごく普通に行われていることだよ。

ヌーディストなどでも直立した状態で醜くはみ出ていれば恥ずかしいからね。

ところが私が女性の秘所のレプリカを作って愛用するようになると、恋愛盲目現象から卒業できるようになったんだ。

これはどういうことだろうと考えたよ。

つまり女性の性的魅力は顔から始まって胸や足やウエストなど色々あるけれど、それらはすべて終着駅に導く為の道案内の標識に過ぎないということなんだ。

だから恋は盲目というけれど、盲目にならなければ子孫は繁栄しない。

子孫を繁栄させるためには顔を見ただけで飽きてしまっては困る。

必ず交わって繁殖までしない限り相手への盲目的執着がなくならないように出来ているんだ。

だから私はフェチには違いないけれど、通常のフェチとは区別したいと思う。

通常のフェチは足や衣服や髪の毛や靴が目的化されている。

でもそれは子孫繁栄に結びつかないから人類の歴史の途上で消えて行く運命だと思う。

私はこの発見をしてから、恋の悩みはこれで解消することがわかったんだ。

でもMRIの資料は常人には手に入らない。ましてレプリカとなれば尚更だ。

そういう意味で私は恵まれた環境下にあると思っているんだ」

そこまで話すと向ヶ丘技師は小さな包みを差し出した。

「一応、人気ナンバーワンの松本翔のレプリカだ。

君が好きかどうかは別として、ナンバーワンの彼を卒業すればどんな変化が君に訪れるか興味があってね」

葦野はそれはありがたく受け取った。

もちろんタイプではある。だが、かつて峰野鐘に抱いたような熱狂的な感情はなかった。

それで思い切って言ってみた。

「これは頂きます。

でも、もし良ければ急ぎませんから、野球選手の城外昇(じょうがいのぼる)さんのレプリカも欲しいです」

すると、向ヶ丘はにっこりと笑って、もう一つの包みを渡した。

「そう言うだろうと思って、それも作っておいたよ。

彼のはサイズが大きいから間違えることはないよ。

一緒に持って行きたまえ」

葦野は驚いた。城外選手を案内したことはあったが、ごく普通に対応していたし第3者の向ヶ丘に分かるはずがなかった。

確かに城外選手の逞しい体に興味があったが、それを悟られるような自分ではないと自信があったのだ。

MRI室に一緒に入って、すぐ退室する僅かの時間に向ヶ丘はそれを見抜いたというのか?

だが、葦野はそのとき、おどけた顔をしてそれを受け取った。

「ビンゴ! です。さすが向ヶ丘さん、ありがとう」
 


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