投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

青い夏休み
【その他 官能小説】

青い夏休みの最初へ 青い夏休み 16 青い夏休み 18 青い夏休みの最後へ

個別指導は恋の味-1

「せっかく誘いに来てくれたのに、ごめんなさいね。夕べ遅くに、急に熱を出しちゃってね」

 夏休みの2日目、榎本家の玄関先で健太郎の母親と話す3人がいた。博士と理人と萌恵だ。

「夏風邪でもひいたんだと思う。だからまた治ってから誘ってあげてね」

 病気で学校を休んだことがない健太郎だけに、美人の母親の表情もさすがに曇って見える。

 事情はよくわかった。

 仕方がないので、健太郎をのぞいた3人だけで図書館を目指すことにした。

 そこは真夏のオアシス。

「シロクマって、こんな気分なのかなあ」

「ペンギンに生まれたかったあ」

「わたし、熱帯魚のお姫様がいい」

 それぞれの感想を深々と述べたあとで、昨日の勉強のつづきがはじまった。

 と言っても新聞の記事はやはり退屈なものばかりで、大威張りで社長になると宣言したものの、テレビ欄を見ているうちは進学だって危ういだろう。

「ボッチのやつ、どうしちゃったのかな」

「いきなり新聞なんか読んだもんだから、おかしな熱が出たんだよ」

「頭の中まで筋肉モリモリだもんな」

 友達の噂話で時間をつぶしていると、

「トイレに行って来ようかなあ」

 博士が独り言を言い出す。

「漏らす前に行って来いよ」

「声がでかいって」

 虫を追い払うように手であおぐ理人に背を向けて、博士は駆け足でドアをくぐって行った。

 トイレはすぐに見つかった。

 さっぱりして、洗った手を適当にズボンで拭いながら廊下へ出ると、ちょうど女子トイレからも人が出てくるところだった。

 あの人だ、と博士が思うのと同時に、

「こんにちは」

 その女性は笑顔で挨拶をくれた。

「こ、こんにちは」

「きみは確か、ハカセくんだっけ?」

「そうだけど、どうして知ってるの?」

「ボッチくんから聞いたんだよ」

「えっ?」

 博士少年は普通におどろいた。


青い夏休みの最初へ 青い夏休み 16 青い夏休み 18 青い夏休みの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前