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デリシャス・フィア
【その他 官能小説】

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-1

 あいつから直接電話がかかってくるときは、何かやらかそうと企んでいるときと決まっている──。

 小田佑介から着信があった時点で、黒城和哉はまたもやぴんと閃いた。

 簡単な用件を話して電話はすぐに切れた。
 相変わらずさっぱりしたやり取りだった。

 小田の指定してきた喫茶店までは徒歩で十五分ほどである。
 そこかしこの店はすでにシャッターを下ろしていて、夜道の暗がりが景色全体に濃く広がっている。

 黒城が到着すると、店内のいちばん隅のテーブルに小田は着席していた。
 右手を上げて合図を送ると、向こうもおなじことをしてきた。

 黒城は口元だけで笑ってみせて、小田の向かいに座る。

「コーヒーは注文しておいた」

「悪いな」

「さっそくなんだけどさ、ようやく例の強姦事件が解決しそうなんだ」

「さすがだな。でもさ、すでに三人の被害者が出ているんだぜ」

「それは俺としても悔いが残るし、彼女たちには悪いと思っている」

「悪いのは犯人だ。それに警察の手際も悪い」

「そうだな。けど正直なところ、優子と花織だけでも無事ならそれでいいと思っている」

 テーブルにコーヒーが運ばれてきたので、一旦会話が中断した。
 あらためて店内を見まわしてみると、時間が時間なだけに客は少なかった。

「犯人は誰なんだ?」

 黒城の目が鋭く光った。

「最初の推理通り、いちばん怪しいのは平家先生だ」

「だろうな。あの教授は女子からの人気がある分、逆に敵も多い。あの歳で結婚できないってことは、それなりに変な性癖とか持ってんだよ」

「平家先生の研究チームの学生ばかりが被害に遭っているし、あの二つのアダルトサイトにだって絡んでいるかもしれない」

「自分の可愛がっている学生たちをそこから見つけ出して、この画像を親にバラすとか何とか脅しをかける。あとは自分のやりたいようにレイプするだけだ。最低だな」

 黒城はコーヒーを一口すすると、苦い顔をした。
 小田もつられてコーヒーをあおったが、何の味もしないといったふうに真顔になり、こう言った。

「それは違う」

 対面の黒城は二口目を飲む動作をぴたりと止めた。


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