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デリシャス・フィア
【その他 官能小説】

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-4

「とにかく、今すぐにでも優子に連絡するんだ」

 それだけ言い残して小田は電話を切った。

 一方の花織はさっそく優子にメールをする。

『いまどこ?』

 みじかいメッセージに祈りを込めて、どうか無事でいて欲しいと唇を結んだ。

 耳鳴りがしていた。

 平家悠利のアリバイは?

 被害者たちの体内に残っていた精液について、容疑者全員が否認する理由は?

 優子の安否は?

 犯人の人物像は?

 いろんな不安要素が一度に押し寄せてきて、誰かにそばにいて欲しいと思った。

 非力な女性ばかりを犯して洗脳する、そんな卑怯者をいつまでも泳がせておいていいわけがない。
 あたしたちの街を取り戻そう──。

 花織の目に光が差したとき、優子からの返信があった。

『あたしなら大丈夫だから、心配しないで』

 当たり障りのない台詞、そこに彼女らしさはなかった。
 疑問を解くべく返信する花織。

『植原咲さんを見つけたのは優子なの?』

 こんなやり取りに意味があるのだろうかと思った。
 電話をすれば済むことなのに、何パーセントかのネガティブな部分がそうさせてくれない。

 優子からまたメールが来た。

『あたしが見つけたのは魔女だった。ほんとうはあたしも魔女なの。花織にはこの意味がよくわかっているはずだよ』

 花織はすべてを理解した。
 友情が冷めていく感じではなく、子どものいたずらが親に見つかったような、淡い胸の痛みだった。
 そしてこのメールは怪しい。

『あなた、優子じゃないよね。どこへ行けば彼女に会えるの?』

 花織はなけなしの勇気にまかせて、核心に迫るメールを送った。
 しばらく沈黙があって、また返信を受け取る。

『あたしに会いたいのなら、今夜の二十二時、キャンパスのファミリアホールに来て。花織一人で』

 心臓が不規則に脈打っていた。
 寒気をおぼえた全身が鼓動に包まれている。

 従うべきなのか、思いとどまるべきなのか、とにかく小田や黒城には告げ口しないでおこうと思った。

 にわかに曇る表情の裏で、花織は一つの決断をした。


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