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デリシャス・フィア
【その他 官能小説】

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『○月×日。私と彼の関係は異常なものでした。出会い系サイトで知り合ってすぐに体の関係を持って、はじめのうちこそ普通のセックスだけで良かったけれど、彼のほうがだんだんアブノーマルな行為を要求してくるようになって、私はそこに未知の世界を見出していました。それがはじまりでした。サディスティックな言葉、グロテスクな器具、屈辱的な快感。それらが私を解放したのです。二人の関係に終わりはないとさえ思っていました』

『○月×日。異常なセックスで飼い慣らされた私は、とうとう自分自身をコントロールできなくなるのです。彼に会えない日は自慰行為に明け暮れて、衣装ケースはアダルトグッズで埋め尽くされていきました。ピンクローター、バイブレーター、ディルド、ローション、そして媚薬。行為はしだいに一人で楽しむものではなくなり、誰かに見られたい願望を生むのです。脱皮したクリトリス、貝割れしたラビア、疼くヴァギナ、目立ちたがる乳房、人見知りの乳首。ぜんぶあなたに見て欲しいから、私は安全な場所から抜け出して、快感を外へ持ち出すことを決めました』

『○月×日。それは普段と変わらない手順で、フェイスメイク、ヘアメイク、全身のスタイリングをこなしていく。いつもと異なるところを一つだけ挙げるなら、体の一部に仕掛けを施したということ。それだけ性的に追い込まれていたんだと思います。玄関ドアを開けて、最初の一歩を踏み出す瞬間、その時点ではまだ理性がはたらいていたはずでした。パンプスのつま先が宙を蹴って、かかとが着地したとき、眠っていた素顔が目覚めたのです。私の仕掛けを見抜いて欲しい。そんな思いで太陽を真上に望みながら、人波を求めて歩き出しました』

『○月×日。見慣れた景色はもうそこには存在せず、欲望でふやけた視界が私に迫ってきました。駅前のモニュメントのそばのベンチに座って、少しのぼせ気味に一息つく。なんの違和感もなく、日常の風景に溶け込んでいるつもりでいました。人通りは多い。さり気なく、しかし計画的に手をバッグの中へくぐらせて、板ガムほどの手触りを確かめる。指がスイッチを押す。瞬間、低い唸り声が聞こえました。携帯電話のマナーモードみたいなその音は、体の芯に心地良いビブラートをあたえながら、鼓膜にまでつたわってくる。一瞬息を止めて、それから息継ぎをするように口元をゆるめました。そうしないと溺れてしまいそうでした。太ももの内側をすり合わせて、もじもじと足踏みしていたら、道行く人の視線がこちらに向けられていました。私は今、オナニーを見られている。そう感じました』


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