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デネブの館
【その他 官能小説】

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デネブの館-13

 やがてアイの瞳に光が戻ると、むっくりと起き上がり、無言で浴室に向かった。
 ひとしきりシャワーを浴びて、洗髪をして体を洗うと、いつもの黒ずくめの格好をしだした。

「わたし、行ってくるから」

 やはり仕事には行くつもりらしい。
 表情は硬く、疲れていた。俺への抗議の意味もあるのか、静かな怒りの気配も漂わせていた。
 俺は、何も言わなかった。
 行きたいなら勝手に行けばいい。俺も、何故だか、腹が立っていた。
 何に対して腹が立つのか、よく分からなかった。
 腹が立つというより、俺は少し悲しかったのかもしれない。
 
 日曜日にアイに休んでもらうのは、俺がなんとなく提案したことだ。
 あまりにも会う時間がなさ過ぎるから、日曜日くらいはと俺がふと思ったのだ。
 アイを拘束する理由は無いし、拘束するような関係でも無かった。
 ただの同居人であり、ギブアンドテイクの関係で成り立っているだけだ。

 部屋から出て行くアイの姿が見えた。
 ほんの少し俺を振り返ったアイの瞳が、ふと哀しそうに見えた。
 今日は、久しぶりに自分で夕食を作るか、外食に出るかしなければならない。
 狭い部屋の中に佇む主のいない『デネブの館』が、やけに寂しく見える。
 もうこの部屋に主が戻ってこないかもしれない。
 なんとなく、そんなことを俺は思った。
 心にポッカリと穴が空いたような、そんな気がした。


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