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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-14

 ぶんぶんって横に首を振る。
「……解った。おいで」
 手を広げる。その胸に吸い込まれる様に身を寄せた。カーテンの隙間から光の線が揺らいでいる。昼間なのに…海の中みたい。
「一緒に暮らそう」
「…はい」
 ギュッと抱き締められる。幸せが溢れそう。好き…好き過ぎて、周りも見えない。
「ご両親は来てる?」
 不意に身体を離された。
「は、はい。駐車場で待ってるって…」
「……行こう。」
「え?」
 ネクタイを締め直し、私の手を掴む。
「鞄は?」
「あ、まだ教室…」
 化学室に鍵を掛ける。
「じゃ、用意したらすぐに正面玄関にまわって。俺も急いで用意するから。」
 そう言うと足早に階段を駆け降りてしまった。
 訳も分からず私も急ぐ。深い理由は解らないが、何かが起る。そんな気がした。

「紫乃、待たせたな」
 あれから十五分くらい。まだ学生達は騒いでいる。 
「先生、一緒に写真撮りましょうよぉ」
「先生、サインして」
 と次から次へと女生徒が召喚されていく。私…
「紫乃、」
 女生徒を無視して私の手をとって歩く。黄色い声、唖然とする視線。そのままズルズルと駐車場まで着いてしまった。
「りゅ…山形先生、良いんですか?明日から学校で…」
「もうすぐ非常勤も終わりだ。赤津先生も帰って来る。心配ない」
「……」
「それより、車の数が多過ぎて…確か、シルバーのワゴン車だったよな。」
「…はい。確かに。って先生…もしかして会うんですか!?」
「もちろんだ。…あ、あれじゃないか?」
 視線の先には運転席と助手席で談笑する、父と母の姿があった。
「親父さんもいらっしゃるのか…」
「あ、龍二ッ…」
 言うより早く、コンコンと窓ガラスをノックしていた。
「はい?」
 エンジンを切っていた為か、ドアを開けて父が出て来た。
「なんだ。紫乃も一緒じゃないか。…と言うと、先生ですか?」
「はい。ここで化学を担当しております、山形と申します。」
「いやいや、こちらこそ…5年間、娘がお世話になりました。」
 頭を深々と下げ合う。察して母も車から降りて来た。
「まぁまぁ、本当にありがとうございました。」
「あの…お父さん、お母さん」
 なんて言おう。この人が彼です…なんて……
「この様な場所で申し訳ありませんが、早めにご両親にお伝えしなくてはいけないと思いまして…。」
 父と向き合う姿…心臓がばくばくする。
「紫乃さんと結婚を前提に交際しています。」
 いっちゃった…ストレート過ぎだってば……
「……そうか」
 だけど、意外にも父は落ち着いていたみたい。
「私は、今は非常勤でここにお世話になっていますが、春から本業の物書き一本で生活していく予定です。」
 篭崎龍奏って話すなんて…龍二は本気なんだ……。
「…物書き?」
 訝しげな顔。
「はい。勤務中は休養していましたが…。篭崎龍奏と言う名で執筆しています」
「…………」
 沈黙が流れる。風に舞う梅の花びらたち。
「とにかく、家で話そう。私は君と話をしたかったんだ。なぁ、母さん」 さっきの沈黙が嘘の様に、にこやかな表情の父。


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