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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《冬の旅‐春の夢》-1

 あれは、二十歳の冬。
  あの十五秒で…
 今、こうして彼とベッドを共に出来るのは、奇跡…と言い合わす他に無い。
「…奇跡だったのかな」
 寝返りをうって彼の体温を確かめる。
「偶然じゃない。必然だ。」
 黙って腕枕をしながら、私の髪を撫でていた彼がボソッと言った。
「必ず惹かれ合ってしまう運命だった。そう確信してる。」
「たとえ、私が貴方の手の届かない場所にいたとしても?」
 ちょっと考えるそぶり。慎重に言葉を選ぶ人…なのだ。
「そうだな。時間は掛かると思うが…俺や君が年をとって、老いてしまっても…きっと出逢ってた。惹かれ合わない筈が無い」
 ニッと笑う口許からは八重歯が覗く。
「凄い自信…」
「自分の物語は自分で決める。偶然を必然に変える。それが俺だ。」
 髪を撫でていた手が頬に降りて来る。何度見てもドキドキしてしまう彼のスペシャルな手。触れる箇所が熱く感じる。
 唇が触れるだけのキス。私の気持ちを見透かした様に、指で唇を愛撫する。思わずうっとりしてしまう。
「俺の手、そんなにイイ?」
「えっ…あ……その」
「そう言うのフェチって言うんだぜ?」
 言うより早く、一度目の情時で濡れそぼったままの秘裂に指を持っていく。触られただけで熟れた果実の様に蜜を流してしまう。
「好きだろ?こうされるの」
「ああっ!」
 長い指で掻き回される。あの、指で…物語を紡ぎ出す…あの指で。
………………
 タカハシ シノ。私、高橋 紫乃は真面目を絵に書いた様な女。橘高等専門学校の五年に所属する。
 髪型はいつもポニーテール。中学から今まで一度も変わった事が無い。一番高い位置に縛っても、今では腰の辺りまである。
 制服も基準以外は着た事が無い。今では私服だが、ジーパン以外は履いた事が無い。もちろん眼鏡。ハッキリ言って地味。自分でも最悪だと知っている。
 こんな私だが、とある純文学作家の大ファンなのだ。
 彼の書いている小説はハードカバーも単行本も全て揃えている。熱烈ファン…と言っても過言では無いと思う。
 いつも新作が出ると嬉しくて…読み終わると憧れて。顔写真を載せない人だったし、ホームページも作らない人だったから、ただ憧れていた。
 …どんな人だろう…
 オジサンだろうと初めは決め付けていたが、彼を知る情報は、巻末の生年月日や彼の簡単な履歴。小説家になる以前の仕事や学歴なんか。それによると、彼は私と七つ違うだけだった。
 …そう昨日までは。それしか解らなかった。
 昨日までは
………………
 朝、学校に行く前にいつもの様にお気に入りの報道番組を見ていた。
 珈琲をすすりながら上着に付いた埃を粘着テープで綺麗にしていた。いつもと同じのんびりした時間。
 エンターテイメント情報が流れてきた。軽快な音楽に画面がフラッシュされる。アナウンサーが芸能人の誰々が結婚、〇〇ミュージシャンがCDをリリースした、等と声を弾ませている。その最後に見慣れた書店が画面に映った。
 …どうしたんだろう、画面とアナウンサーの声に集中した。
『〇〇書店で昨日からすばる文学賞を受賞した作家のカゴサキ リュウソウさんのサイン会が開催され…』
 は…?カゴサキ リュウソウって篭崎 龍奏しかいない!
 ガバッとテレビの画面に顔を寄せた。書店の多分二階だろう。簡易テーブルの上には新作と思われる本が重なっていて、その後ろには…


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