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カレーの歌
【二次創作 その他小説】

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カレーの歌-2

僕と君が座ったのは、小さな出窓のすぐ側だった。レンガ風の壁は、焦がしたカレーの色によく似ていると思った。それを言うと君は、
「ロマンがないのねえ」
なんて言って目を細めた。
「あなたらしいわ」
口元には笑みさえ浮かべて。泣きたいくらい哀しくて、なのに僕等は幸せそうに笑い合った。寂しくて、哀しくて、そして同じくらい愛しくて、この上なく優しい気持ちになって、僕等は黙々と朝食をたいらげた。小さくてやさしい、ルゥのスパイスの香り。
「じゃあね」
「ああ」
東京行きの新幹線の扉の前で、君は小さくそう言った。言ったことは覚えているけれど、その時の君の顔はやっぱり思い出すことが出来ない。あるいは、僕の瞳が涙で曇っていたのかも。そんなことすら、もう不確かだ。扉が閉まって君が手を振って、僕は小さく手を振り返し、そして、コートにこびりついたカレーの香りだけ連れて、この東京へやって来た。
「・・・カレー食いてえな」
2年。僕は未だにこの東京の街でくすぶったままだ。からっぽの僕の頭には、あのカレー色のレンガの壁が浮かんでは消えた。もうほとんど思い出せない君のうつむいた顔、スパイス臭、君の言った言葉たち。
「食いにいこうかな、カレー」
マフラーを2重捲きにして、僕はこの冷たい街の中へ足を踏み出した。


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