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今宵、満月の夜に
【その他 官能小説】

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今宵、恋人の夜に-2

ロウは病院・・・って言っても『人間でない者』のための病院で薬の研究をしている。
『人間でない者』は人間の薬が効かないから。飲むと思わぬ副作用が出てしまうらしい。
私は薬自体飲んだことがないけど。


チクタクチクタク・・・。
やけに時計の秒針の音が大きい。
ロウが家を出てかれこれ12時間。
この1ヶ月で一番長くロウを見ていない。
時計の針は夜の10時を指している。
久しぶりに夜、一人ぼっちになったせいだろうか?なんかやけに人恋しくて、部屋が冷たく感じる。
なんだか自分が取り残されてしまった気がしてぶるるっと震えた。
「散歩でもしてこよ・・・。」
『いってらっしゃい』も『一緒に行くよ』も返ってこないのに声に出して言う。

公園を一人でぶらぶらと歩く。
ここは・・・ロウと初めて会った場所・・・。
胸がきゅっ・・・となる。
会った次の日に襲われて、『俺といれば餓えとは無縁だろ』って一緒に暮らすことになって。料理ができないっ
て言ったら毎食作ってくれて、寒いと言えば抱きしめてくれる。自分の他愛もないわがままを全て受け止めてくれる・・・。

ロウの事を思い出していたら無性に会いたくなってきた。
くるり、と踵を返し家に帰ってロウを待っていようと思ったその時だった。

ーーーーぐいっ。
左手首を掴まれ、公園の茂みに連れ込まれる。
「な・・・っ」
驚いて声が出ない。
着ていたブラウスのボタンが引きちぎられる。
催眠術で何とかしようと思ったが、相手が目を合わせてくれないため効力がない。
「大人しくしてろよ・・・。」
馬乗りになった男が言う。
「くくっ・・・これはまた、ラッキーだな。」
人の顔を見てにやりと卑下た笑いを男が浮かべた。
「や・・・めて・・・っ」
怖くて怖くて体が動かない。
「すぐに、お前も気持ちよくなるさ。」
べろり、と首筋を舐められ、鎖骨にキスを落とされる。
嫌だ、気持ち悪いっ。
毎日のようにされている行為なのに、ロウじゃないと気持ち悪い。嫌悪しか感じない。
催眠術がかけられないとなると、普通の人間の女と一緒だ。
下着に手を掛けられる。
「やあぁっ!ロウ・・・!ロウ!」
無意識のうちにロウの名前を叫んだ。

すぅ・・・っと体が軽くなる。
ぎゅっと恐怖で瞑っていた目を開けると今まで上に乗っていた男が片手でロウに持ち上げられていた。
「ロ・・・ウ?」
涙がポロポロと溢れる。
悲しいわけでも、辛いわけでもない。
ただ・・・ロウが来てくれたことに安心した。
ロウは持ち上げた男の鳩尾に蹴りを入れ投げ捨てた。
その時の瞳は今まで見たこともない・・・冷酷な色をしていて・・・。
それが自分の為にしてくれたんだと思うと、怖いというより嬉しくて。
「ロウ・・・っ」
そのままロウの胸に飛び込んだ。


「・・・で、なんでこんな遅くに散歩なんてしてたんだ?」
乱れた服の私を庇うように抱き上げながら部屋に運んでソファに下ろし、ロウが不機嫌そうに言った。
「・・・って、ロウがいなかったから。」
寂しかったんだもん、と呟くと途端にロウの瞳が穏やかなものに変わった。


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