投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

黒の他人
【ラブコメ 官能小説】

黒の他人の最初へ 黒の他人 16 黒の他人 18 黒の他人の最後へ

黒の他人<前編>-8

あれから小一時間ほど経過しただろうか。

ピピピピッ ピピピピッ

携帯のアラームが午前零時を知らせる。
そう言えば加奈の家はいったいどこなんだろう?
独り暮らしと言っていたから時間は問題ないだろうけど、終電とか大丈夫なんだろうか?

「……おい?おいっ!時間大丈夫なのか?」

その言葉にハッと目を覚ましたかと思うと、慌てた様子で身体を起き上がらせる加奈。
きょろきょろと辺りを見回すその姿は見事なまでに寝ぼけているみたいだ。

自分の置かれた状況に気がついたのか、加奈は俺の顔を目にするや、
胸元を隠しながらまた、慌てて布団に潜り込んでいった。

「なんだ、まだ寝ぼけてんのか?それともすっかり酔いが覚めたか?」

「あ、あのっ 私…… どうしてこんな恰好……」

どうやら記憶が飛んでるらしい。
ホント危なっかしいわ。
ゆっくりと俺は腰を上げると、ベッドに体を乗り上げては、加奈の横に寝転んでみた。

「なんだ、もう忘れたのかよ?あんなに気持ちよさそうに感じてくれてたクセに……」

その言葉に恥ずかしさと驚きを隠せない様子の加奈。
真っ赤な耳がとても可愛らしくてそそる。

「もう一回…… するか?」

そう言って俺が優しく髪を撫でると、ギュッと目を閉じ震える様子がなんとも言えない。
まずいな。なんか俺、この女に嵌ってしまいそうだ。

「ばぁか、嘘だよ…… 何もしちゃいねぇよ」

「……う、嘘?」

きょとんとした目で俺を見つめる加奈。
何の気無しに俺は指先で鼻の頭を擽ってみた。

「にゃっ くすぐったいですっ」

嫌がる素振りは無い。むしろくすくすと笑っている。

友達でもなければ恋人同士でもない。
なのになぜだろう。
手を伸ばせばすぐにでも抱きしめられるこの距離を、不思議と俺たちは開こうとしなかった。


黒の他人の最初へ 黒の他人 16 黒の他人 18 黒の他人の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前