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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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アンバランスな愛-2

「これが意味だと思う」

「?」

 ゼインの記憶を読んでゼインと出会った人々の事は知っていたが、男には意味が分からなかった。

「沢山のいろんな人と出会って影響しあう事……それが産まれて、生きてる意味……」

 世界中の人々が影響しあって、そうして世界が出来ている。
 昨日と同じ今日など無く、今日と同じ明日も無い……そんな日々が延々と巡り巡る世界。

「私は……間違っていたのですね?」

 その出会いを遮って終わらせてしまった。

「間違ってたわけじゃねぇさ……」

 知りたい欲が間違いだとは思わない……ただ、知らなすぎてやり方を間違えた。

「アンタと会った事も俺が産まれた意味のひとつだから……アンタが俺に会った事もアンタが産まれた意味のひとつ……だろ?」

 酷く残忍で、凄く非情な事をした男に対しても「産まれて良かった」と……そう言えるゼインの中の『生』は純粋で綺麗で……男はそれに憧れたのだ。

「ゼロ……君は狡いです」

 ゼインに憧れて、ゼインになりたくて、身体を奪ったのに……彼には特別な人が沢山居て、それに嫉妬して……ゼインのせいで知りたい事が益々増えて、それに翻弄されて……それなのに、やっぱりゼインが愛しい……。

 ああ……そうか……一番知りたかったのはこれだ……愛しいという感情。

「アンタに言われたかねぇよ……つうか、ゼインだって」

 ゼインは言っただろ?と言いつつ、はて……いつ言ったんだっけ?と首を傾げた。
 ぼんやりした記憶を探るゼインに、男はクスリと笑う。

「……それです。私のつけた名前が気に入りませんでしたか?」

「気に入る気に入らねぇの問題じゃねぇよ。名前じゃなくてただの番号じゃねぇか。誰が喜ぶかっつうの」

 昔の様に話をする2人……昔と違うのは、ゼインの一方的な話ではなく、会話をしている事だ。
 あの時はどう感じたのか、とかその時の感情まで聞いてくる男に、ゼインは全てを話した。

 時間の感覚が曖昧な世界で長い長い話をしているうちに、ゼインの瞼が重くなってきた。

「……眠いですか?」

 大きく欠伸をするゼインに男は優しく聞く。

「んあ……さっきまで寝てたのにな……悪ぃ……続きは……」

 ゼインは最後まで言葉を紡ぐ事が出来ずに、すぅっと眠りに落ちた。

「はい……続きは……他の人に伝えて下さい」

 男はゼインの額に唇を落とすと、髪に絡まっているゼインの指をほどく。

「君には迷惑かもしれませんが……忘れないで下さい」

 出逢えた事を憶えておいて欲しい……そう願う男の姿が透けていった。

「愛してます……ゼイン」

 男の最期の言葉は、男の姿と共に霞となって消え去る。
 白い世界には、穏やかに眠るゼインだけが残された。


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