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杉山梢の独り言
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2人の進路-1

さて卒業も近づいて来た私はまだ自分の進路を決めていませんでした。

専門学校にでも行こうかと思いましたが、候補はあっても決められません。

それは、竹中のことが気になっていたからです。

私は、竹中に聞きました。

竹中は高校卒業後、どうする積もりなの?

「プーしかないだろう。まあ、バイトで食いつないで行くか。

それとも体使った仕事を見つけて汗流して稼ぐか……」

割と無計画な彼の考えに私は驚きました。

けれども彼の家庭の経済状態では進学など考えられず、高校卒業後すぐにでも働いて自立しなければいけないようでした。

私も彼に調子を合わせていました。

本当に私の家もしんどいからね。

親は自己破産だし、兄弟は全員素寒貧だし。私なんかお水でもやって稼ごうかな?

「やめろ、やめろ。そんな仕事なんか」

あら、竹中って私のこと心配して言ってくれてるの? 

そんな仕事で身を持ち崩しちゃいけないって?

「ちげえよ! お前の色香じゃ客がつかないからだよ。

確かああいうのは歩合制で手当てが支給されるらしいからな」

そんな冗談を言いながら、例えばもしスポンサーが現れて私たちにお金をくれたら、どうするかという夢物語をしてみました。

「俺はなあ、農業大学にでも行って、卒業したら牧場で働きたいよ。

けれど大学に行くには1000万円もかかるというからなぁ。まず無理だ。

とすればだ。

あまり気が進まないけど飲食店にでも勤めて、せいぜい悪い女に捕まらないようにちまちま生きて行くしかないかなと」

その夢面白いね。いやいや飲食店の方じゃなくて、牧場の方だよ。

だけどさ。それなら牧場を捜して働けば良いことじゃないの。

なんで農業大学なのさ? 私はそれとなくさぐってみたのです。

「今農作物の輸入が自由化されて来る動きがあるから、牧場経営でも生き残れないかもしれないんだ。

とすれば専門に勉強して、生き残れるような牧場経営を考えなきゃいけないだろう?」

でもそんなこと大学に行ったくらいでわかるの?

「そりゃあ、必死に勉強しなけりゃわからんだろうけどな」

第一、仮に勉強してその方法がわかったとして、牧場はどうするの?

ただで牧場は転がっていないと思うけど。

すると竹中は悪戯っぽく笑うと言いました。

「今はもしもの話しをしてるから、そんなこと考えちゃいないけど。

そうだなぁ……大きな牧場の一人娘をたぶらかして婿に入るんだよ。

そうすりゃ牧場が手に入る。

そうか! 牧場経営の勉強と一緒に軟派の勉強もしておかなきゃな」

あはは……全く夢のような話だね。現実逃避も良いところだけど。

でもどうして牧場なの? 自然と触れ合うなら一般農業でも、漁業でも良いじゃない。

「そうだなあ……

1つは広々とした牧場で馬に乗ったり、牛を追ったりするのが男らしい気がして。

後は動物と触れ合うことで、なんか自分の中にある純なものが保てるような気がするんだ。

まあ、結局は飲食店勤務かなんかして人間と触れ合うことになるんだろうけどね」

竹中の言葉を聞いていると、いつもの強気な彼とは裏腹に将来への不安に包まれた心細い少年の姿を感じました。

私は彼を守ってあげたい、とそんな気がしました。

けれども自尊心の高い彼を私はどうやって守ってあげることができるのでしょうか?

 


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