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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第四話-9

「桜さん。さっきも話したけど、マルは今性欲がないんだ。キスをしたいって思わないのは、何も相手が桜さんだからじゃないんだよ」
俺がそうフォロー(?)すると、桜さんはしばらくうつ向いてから、意を決したようにきっ!と顔をあげ、そしてマルの顔を両手で自分のほうに向かせた。
「へ?さく……」
「んっ!」
桜さんは何も言わず、マルの唇を自身の唇で塞いだ。


   ***


数日後。
PCの前にはいつものように紅葉がいて、俺の隣には何故か瑞希が座っていた。
「兄さん。私、決めました」
「何をだ?」
「うっす!」
瑞希と話しているとマルがやってきた。
「おう。どうだその後は?」
性欲を取り戻せたのか聞いてみた。
「いやぁまだみたいっすね。キスは毎日してるというかされてるんすけど」
「そっか。まぁそのうち取り戻せるだろ」
我ながら無責任なことを言っていると思ったが、超能力が相手ではそうとしか言えない。
「あれ?その子誰っすか?あ、もしかして先輩の彼女っすか?」
「違う。俺の妹だ。可愛いだろ?」
「え、まぁ可愛いっすけど。妹さんも大変っすね。お兄さんもお姉さんも、学園内で相当な有名人じゃないっすか」
言われてみればそうだな。俺は『探偵』として知れ渡っているだろうし、姉ちゃんもヘソ丸出しの『ヘソ出しクイーン』として有名だ。
「そうなんです。どっちもシスコンなので、有名じゃない妹としては複雑です」
「おいおい瑞希。俺はシスコンじゃないぞ」
「どの口が言っているんですかね?」
シスコンなのは姉ちゃんだけで、俺は断じてシスコンではない。
「クイーンの妹さんだから、プリンスってとこっすかね」
「それを言うならプリンセスですよ、蝦夷松先輩」
「マルでいいっす。あれ?ってか自分の名前言ったっすか?」
「ん、ああ。ちょっと前に家でマルの話題になってな」
家で食事中、姉ちゃんが「マルとやらはイスワリと仲良くやってるのか?」と聞いてきて、それで瑞希にもマルのことを話したというわけだ。
「私だけ知っているのも悪いですよね。改めまして、兄さんの妹の瑞希です」
お。そういやマルのせいで忘れてた。
「ところで瑞希、さっき何か言ってなかったか?決めたとかなんとか」
「はい。私もこの同好会に入ろうと思うんです」
「……へ?」



第四話〜性欲を失った少年〜
【終】


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