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ナクシモノ〜シスター&ブラザーコンプレックス〜
【学園物 恋愛小説】

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第二話-13

日向さんはすーはーと深呼吸をし、
「どうしてもっと早く言ってくれないの!?」
「う、あ、いや……」
みっともなく狼狽える天之川。
「私、は……」
日向さんは何かを呟き、息をのんでこちらへやってきた。
「ショックで……」
天之川のすぐ目の前に立つ日向さん。そのせいで俺には彼女の背中しか見えず、天之川の姿は隠れてしまった。
「おヘソ……」
日向さんは制服の裾を掴み、一瞬躊躇してから勢いよくバッと持ち上げた。
「なくなっちゃったじゃない!」
「な、に……」
少しの間誰もが黙りこみ、パソコンの駆動音だけが部室を支配した。
「……ある、けど」
天之川がそんなことを言い、俺と日向さんは同時に、
「「…………え?」」と声をあげた。
日向さんの右手がお腹のあたりに移動する。
「あ……ある……あるよ!」
日向さんがこちらを振り向き、お腹にある穴――ヘソを強調するように見せてきた。
「よかった……よかったー……」
日向さんはそう言い、倒れこむようにしてその場――天之川の膝の上に座った。
「お、おい……!?」
「これで、海にも行けるし……みんなでお風呂に入れるし……よかった……」
日向さんは目をつむり、ぐったりと天之川に寄りかかった。安心したせいで眠ってしまったらしい。
「あ、え、お、おい神代、俺は、どど、どうしたらいいんだ……?」
「うーん……抱きしめればいいんじゃないか?」
「そ、そんな恥ずかしいマネできるか!」



第二話〜ヘソを失った少女〜
【終】


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