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『桃子記念日』
【痴漢/痴女 官能小説】

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『桃子記念日』-8


 …これは女子寮で、かつて繰り広げられた光景である。
「きゃあっ、桃センパイ、やめてください!」
「ふふふ。アナタのおっぱい、程よく実ってるわねぇ。でも、熟れてるとはいいがたい」
「あ、あふぅん……も、桃センパイやめてぇ……」
「こうすれば、凝りが取れて、すっきりするわよ。アナタ、最近、ストレス溜まってるみたいだったから、ほれほれ、遠慮しないで、いい声挙げなさい」
「あ、あぁん……も、桃センパぁイ……ん、んんっ……」
 桃子の“セクハラ・マッサージ”による攻撃を浴びている後輩の女学生は、確かに最近、学業に関してのストレスで、気持ちが沈んでいた。それを見た桃子が、俯いて廊下を歩く彼女の後姿を見つけた瞬間、後ろから乳房を鷲づかみにして、それを揉みはじめたのだ。
「あ、あんっ、ああぁああぁあんっ!」
 女学生が、ひときわ大きな声を挙げたかと思うと、くったりと脱力して、桃子にその全身を預けてきた。
「すっきりした?」
「は、はぁい……なんだか、頭がぽぉっとして、気持ちいいです……」
 先ほどまでの沈うつな表情はなくなって、体を包んだ心地よさに陶然としている様子であった。
「!?」
 満足したように女学生のふくよかな胸から手を離した桃子は、背後に殺気を感じて、すぐさまその体を横滑りさせた。
「チッ」
「ふふ、あたしの後ろをとろうなんざぁ、100年早いわ、遼子」
 ソフトボール部に所属しているため、日に焼けた健康的な褐色の肌をしている、背の高い女学生・坂場遼子が、悔しそうに顔をゆがめて、桃子の目の前に立っていた。
「柏木のようには、いかないってわけか」
「まあ、そういうことよ」
 ちりちりと、視線に炎をくゆらせながら、二人は対峙している。
 “姉御肌”な気質があって、特に後輩たちから“お姉様”と慕われる遼子と、“セクハラ覇王”ではあるが妙に人に懐かれる桃子は、女子寮内の人気を二分しており、いつのまにか、城西女子大学の“竜虎”と呼ばれるようになっていた。
「アナタも、ソフトボールのナショナルチームに選ばれたかったら、あたしをしっかり捕まえられるようになることね」
「チッ」
 癖のような舌打ちを残し、遼子は翻ってその場を去っていった。
(元気ないわねぇ。何か、悩みでもあるのかしら)
 もし打ち明けてくれたなら、全力で相談に乗ろうと、桃子は考えている。“セクハラ覇王”と呼ばれながらも、誰彼区別なく話を聞きだし、それを解決させてきた桃子は、故にこそ、この女子寮内でも抜群の人気を持っていた。
(んー、でも、遼子の性格だと、それは難しいか)
 桃子は、ひとつ腹に決めて、夜が来るのを待つことにした。


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