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『桃子記念日』
【痴漢/痴女 官能小説】

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『桃子記念日』-31

「………」
「桃子?」
 急に押し黙ってしまった愛妻の様子に、宗佑がマッサージを続けながら、怪訝なまなざしを向ける。
「あ……」

 ぐるぐるぐる……

「き、きた……急に、お腹……あ、あぅっ……!」
「う、生まれるのかっ!?」
「ち、ちがいますっ……!」
 安定期に入ったばかりだから、陣痛が始まるわけはない。
「ト、トイレ……おなか、あ、ああっ、まずいかもっ……!」
 急激に襲い掛かってきた“便意”に、桃子はお腹を抑えて汲々とし始めた。
「ウ×チ、出そうなのか?」
「で、でるっ……ト、トイレ行きたい……!」
 なのに、桃子はその場から動こうとしない。…動けないのだ。
 ちなみにトイレは、二人が今いるベッドルームから、階段を下りた1階にある。とてもではないが、そこまでたどり着けそうにないほど、桃子に襲い掛かってきた便意は、獰猛にして強烈であった。
「お、おにいちゃん、どうしようっ……桃子、ウ×チでちゃうっ……!!」
 切羽詰っているが故か、懐かしい呼び名が出てきた。場合が場合だというのに、宗佑はつい、笑みを浮かべてしまった。
「あっ……!」

 ぶっ!

「!?」
 大きく空気を奮わせる音が鳴った。腸内に満載になったガスが、たまらず桃子の尻から垂れ出てしまったのだ。

 ぶすぶすっ、ぶぶっ、ぷううぅぅっ!

「や、やだっ、おならが、とまらないよっ、おにいちゃんっ!!」
 お尻を少し浮かせて、次々とガスを噴出する桃子。どうやらもう、猶予はないらしい。
「………」
 宗佑にとってすれば、たとえ妻が目の前で“放屁”をしたとしても、その愛情が揺るぐことはない。だが、妻が羞恥と便意に苦しむ姿を見続けるのは本意ではないので、ひとまずの打開策をとにかく考えた。
「ああ、そうだ」
 閃光のように思いついた宗佑は、気早くもベッドルームの脇に用意を始めていた、生まれてくる赤ちゃんのための用具一式の中から、アヒルの形をしたものを取り出した。
「いいものがあるじゃないか」
「お、おまる……」
「漏らすより、いいだろう?」
「そ、そうだけど……」
 まさか、わが子に使うためのものを、母親が先に使うことになるとは…。桃子は少し葛藤したが、ガスがひとりでに漏れ出るくらい切羽詰った便意の前では、抗う術など何も持ち合わせてはいなかった。

 ぐるるるるっ!!

「ひっ、も、もうだめっ、でる、でるぅっ!」
 最終宣告を思わせる獰猛な便意を感じるや、すぐに体を起こし、ワンピースの裾を持ち上げて、パンツを下ろして、アヒルのおまるにまたがる桃子。
「!!!」
 腹部に力を入れるより先に、お尻の穴に内側から強烈な圧力が掛かるのを感じた。
「ぁ……あ……あぁ……」
 ゆっくりとした、それでいて苛烈な衝撃が、桃子の体を突き抜ける。とある一箇所にその勢いが集まり、凝結しながら大挙して、桃子の体に暇を告げていくのを、もう、どうすることもできなかった。
「いっぱい……ぶっといのが……でてるぅ……」
 アヒルのおまるの中で、自分が出しているものが、とぐろを巻いていくビジョンが、桃子の脳内にもはっきりと見えていた。


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