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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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選択-9

 南の大陸の遥か上空を赤いドラゴンが猛スピードで翔ぶ。
 その背中にはカリー、ポロ、スラン、ケイ、キャラ、アースの姿。
 ドラゴンの身体と背中に乗っている人々は、薄く金色に輝く膜に包まれていた。
 高度を上げると空気は薄くなるし気温も下がるのだが、魔導師アースの魔法により結界が張られ、快適な空の旅になった。
 ただ、魔力を供給し続けているキャラだけはかなり辛そうな様子。
 通常よりも広く開けた扉から、大量のエネルギーが身体を巡っているらしい。
 それがどんなモノなのか、魔力を持ってないカリーには想像もつかないが、呼吸も荒く額に脂汗を浮かべているのを見たら、相当キツイのは分かる。
 そこまでしてでも、急がなくてはいけない。

 カリーの話を聞いた面々は、ひとつの結論に辿り着いた。

 ゼインはザルスに身体を明け渡すつもりだ。

 そうすればザルスの願いは叶い、もう実験は必要なくなりポロのような実験体も必要ない。
 身体を渡してもゼインが死ぬ事は無い……というのは賭けだろうが、生きる事にねちっこいゼインならザルスに侵食されずにいる可能性は高い。

 だが、それも時間の問題だ。

 元から魔力を持っていないゼインは、自分の魔物としての魔力を上手く扱えていない。
 そんなゼインが魔物に取り込まれた状態で、長く持つとは思えない。
 時間と共にじわじわと侵食されて消滅してしまうだろう。

「それなにぃ?」

 ドラゴンの背中で何やら造っているアースの手元を覗き込んだカリーは、複雑な魔法陣をしげしげと見つめる。

「『分離の魔法陣』っつってな、ひとつの身体に2つの魂がある場合、分離が可能なんだ」

 これを使うには大量の魔力が必要なのだが、魔力貯蔵庫であるキャラが居るなら直ぐに使用可能だ。

「まあ、間に合えばいいがな」

 これだけ大規模な魔法陣を移動しながら空中に描くと、描いた分を維持しながらなので集中力と繊細な魔力操作が必要で余計疲れるのだが、何せ時間が無い。

「クラスタに到着しても俺とキア……キャラは当てにしねぇでくれ」

 アースは心配そうな視線をキャラに向け、軽くため息をついた。

「……たく……どうしてこう厄介事に首を突っ込むんだか……」

 今でも充分キツイのに『分離の魔法陣』を使う魔力を放出させるなんて……自殺行為だ。
 アースは首を小さく横に振って、魔法陣に視線を戻した。

「ごめんね?」

 アホな恋人のせいで大事な人を危険に晒している事を、カリーは謝る。
 謝るが、そこまでしなくて良いとは言わない。
 ゼインが無事に戻るなら、何を犠牲にしても良い。
 そんな事ゼインは望んでいないかもしれないし、これでキャラが死ぬような事になったら怒り狂うだろうが……そんなの知った事ではない。
 カリーの望みはゼインと共に生きる事。
 その為にはゼインが居なければいけないのだ。
 だから、使えるものは何だって使う。

 欲望に真っ直ぐなカリーの姿勢は、アースにとってかなり共感出来る。


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