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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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選択-23

「俺は……ゼインだよ」

 ゼインがギリッと歯を喰いしばると、蒼い炎が目に宿る。

ダンッ

「ゼイン!!」

 地面を蹴って谷に飛び込んだゼインにカリーが走る。
 走りながらアビィとクインを探すが、2体供動ける状態じゃない。
 カリーは舌打ちしてゼインを追って地面を蹴った。
 一瞬、フワッとした感触の後、谷底へと身体が引きずりこまれる。

「カリオペ!!」

 しかし、ビンッと腕を引かれカリーの身体は崖っぷちにとどまった。

「離して!」

「暴れんなっ馬鹿」

 怒鳴ったカリーに怒鳴り返したのはスランだった。
 スランは両手でカリーを掴み、彼のベルトをケイが後ろで握っている。

「ぬおぉぉっ海の男の根性おぉ!」

 ズリズリと谷底へ引っ張られる2人を、ケイは足を踏ん張って支えた。
 カリーの腕を掴んだスランの手から血が流れてズルリと滑る。

「くそっ」

 スランは歯噛みして手に力を入れた。

「やだってばっ!離して!ゼイン!ゼイン!」

 スランの手を引き離そうともがくカリーと、離すまいとするスランの耳に小さな声が届く。

「……生きてくれ……」

 ハッとした2人は谷底に目を移し、ゼインの姿を探した。
 しかし、暗い谷には何も見えない。

 その時

「間に合ええぇぇっ!!」

 スランを飛び越えて黒い魔導師と赤い魔導師が谷に飛び込んだ。

「いっけえぇ!!」

 赤い魔導師は金色に輝く巨大な魔法陣を両手に掲げ持ち、黒い魔導師はキャラを抱いていた。
 カリーとスランが呆然と見守る中、3人の姿と魔法陣の光が暗闇に吸い込まれる。

ブワッ

「きゃあっ!!」

「うおっ?!」

 光が見えなくなった刹那、金色の光の柱が起立してカリーの身体を吹き上げる。
 落ちないようにカリーを掴んでいたスランは、慌てて飛ばされないようにカリーを引き寄せて腕の中に収め、ケイが2人をまとめて受け止めた。

ドオンッ

 耳をつんざく轟音と激しい波動が3人に襲いかかり、その身体を吹き飛ばす。
 カリーはスランの腕の中でゼインの言葉を思い出していた。


 生きてくれ


 でもそれは……彼が居ないと出来ない事……。


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