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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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選択-1


 この世界は島国ファンを中心にして、東西南北の大陸に分かれている。

 一番小さい東の大陸は、大陸自体がひとつの大きな国。
 その次に小さい北の大陸は、500年前の大戦争により氷に閉ざされ、魔物の巣窟となっている。
 大きな西の大陸は小さな国が点在しており、日々国境争いで落ち着かない大陸だが、活気があると言えなくもない。
 そして、一番大きな南の大陸も国境争いで忙しないが、密林の面積の方が広く人口は少ないので西程ざわざわしていない。

 そんな南の大陸の最南端クラスタは、どの国も統治を嫌がる土地だった。
 何故なら『黒海』と呼ばれる海に一番近く、その『黒海』の遥か向こう側には魔物の巣窟、氷に閉ざされた北の大陸があり魔物が頻繁に現れるからだ。
 何故、最南端の向こうに北の大陸が存在しているかは分からないが、事実そこに在る。
 500年前の全大陸を巻き込む戦いの時に、北から南を侵略するために造られたゲートだとか、説は色々あるが真相は謎に包まれたままだ。

 『黒海』とは南から見える北の大陸を囲む黒い海……島国ファンから見える北の大陸には存在しない海だ。
 そこには高い濃度の魔力が渦巻いており、そこから現れる魔物は高濃度の魔力の力を得て異常に強い。
 基本的に海の魔物なので大陸深くまで侵略したりはしないが、出来るだけ関わらない方が良いと、どの国も避けているのだ。

 そのクラスタの端に、ゼインの居た『畑』がある。
 トムスにあった建物と全く同じ外見だったのだろうが、今は崩れ落ちて瓦礫の隙間から木が伸び、あちこちに花も咲いている。

 その瓦礫の山の上に1人の男が座っていた。
 茶色いダボダボのローブを頭から被り、何をする訳でもなくただ座っていた。
 チュンチュンと小鳥達が男の周りで羽を休め、色とりどりの蝶々が飛び交うのどかな光景。
 その風景は、突如現れた魔物によって台無しにされた。
 ベチャベチャと粘ばっこい水音をさせながら現れた魔物は、体長5メートルはあるアンコウに手足が生えたような……異常に大きい手足のカエルのような……そんな感じ。
 驚いた小鳥がバサバサと飛び去るのを、魔物の口から伸び出た舌が絡め取り自分の口に運んだ。

バキ バキ

 鳥の骨が砕け羽が飛び散り、男の視界を塞ぐ。
 しかし、魔物が男に目を向けた瞬間。

ザシュッ

 魔物の真下……地面から赤黒い触手が魔物の身体を貫いた。
 触手の先には微かな光を放つ『核』が、血に濡れて明滅していた。
 一瞬の出来事に何も反応出来なかった魔物は、ドッと地面に倒れる。
 赤黒い触手は『核』を男に渡すと、魔物をゆっくりと地面に引きずり込んでいった。
 男は血まみれの『核』をじっくり見た後、ひょいっと口に入れてゴクリと飲み込む。

「……えげつねぇなぁ……」

 不意に、その場にそぐわない呑気な声が聞こえた。
 声の主はサクサクと草を踏んで男に近づく。

「……ゼロ……」

 声の主……ゼインを見つけた男の口から懐かしい名前が出る。


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