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悲しい深海魚
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母娘(おやこ)の相克-2

 忍の並外れた家族愛は人間だけにとどまらない、猫もまた大切な家族の一員なのである。家族の引越しには当然のごとく六匹の猫が含まれていた。

「不動産屋回ってみたけれど、気の利いたマンションで猫が飼える所ってなかなか無いの。どうしたらいいんだろ」

 いつも強気の忍が今回だけは頭を抱えていた。

「忍、この際一緒に暮らさないか。俺の家田舎だから子供達不便だろうけど、古い分広いし、猫も自由に飼えるよ」

「いいの?」

「今住んでいる家は会社の寮という名目で借りているから、一緒に暮らすとなると会社の手前籍を入れないと不味いな。この際ちゃんと籍を入れるか」

「私はそれでいいけど、娘達がどういうか・・・聞いてみるね。良いといったらそうして」

 意外な事に二人の娘達はすんなりと私と忍の結婚を認めてくれた。かくして忍と共に二人の娘と母親、そして六匹の猫たちがそれまで母と私と一匹の犬で静かに暮らしていた私の家にやって来た。

 私の家は市内とは名ばかりの山間にある。自分が管理する店から近いというだけで選んだ借家であったが家は広かった。新たな四人とその荷物、更に二台のグランドピアノがすんなりと納まり、六匹の猫たちもそれぞれの縄張りを確保したようである。最初からいた犬のシロだけがなにやら落ち着かないのがおかしかった。

 私の母も納得したのかどうかはわからなかったが、何も言わず新しい家族を受け入れてくれた。


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