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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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-9

「あ〜…も、いいや」

 スランは頭をガリガリ掻いて小難しい内容の研究資料を束ねる。

「ちょ……待て……これ、ここ読んでみろ」

 丁度、ゼインの目に入ったページ……そこは、あの男自身の研究内容だった。

 様々な記述と共に図解までしてあるそれは、誰がどう見ても……。

「ザルス……?あいつ……ザルスなのか?」

 自ら動く植物の中でも、最もタチの悪いザルス……それが、あの男の正体。
 ゼインの実験にザルスの樹液を使ったのも、まずはザルスの樹液に慣らす所から始めた……と考えれば納得だ。
 男2人の変な様子に気づいた女2人も、カウンターにやってきて資料を覗き込む。

「ザルスって魔物だったっけ?」

「いや、違う……多分、たまたま捕らえた獲物が魔物だったんだ……それで、魔物の力を手に入れたんだろ」

 どんな物でも永く存在していると魂が成長する。
 有名なのが勝手に動く甲冑や、歴史を語る絵画など……その殆どは魔法大国ゼビアに納められているらしい。

「んっとぉ〜…とっても年寄りのお爺ちゃんザルスが、魔物の力を手に入れて、ゼインと繋がりたい……って事?」

 簡単にスパッと言い切ったカリーの言葉は、何だか卑猥で思わず苦笑してしまう。

「さしずめ『君とひとつになりたい』ってトコか?」

「やめれ」

 スランの言葉には苦虫を噛んだような顔になるゼインだったが、多分そういう事なんだろう。
 惚れられた本人であるゼインと、フラれた腹いせにゼインの代わりされた他のナンバーズにはたまったものじゃないが、非常に傍迷惑な恋愛と考えられなくもない。

「居るのよねぇ〜…そういう自分勝手な恋愛する奴ぅ〜そんなのがストーカーとかの犯罪に走るのよぉ〜」

「ここはキッパリふってやらねぇと勘違いしたままだな」

 暗殺者2人はしみじみと相づちを打ち合う。
 事はそんな単純な事じゃない筈だが、本当に些細な事にも思えるから不思議だ。

「あ〜…じゃ。奴のトコ行ってキッパリと断わらねぇとな」

「気をつけた方がいいよぉ〜?断り方間違うと当て付け自殺とかしちゃうかもよぉ〜?」

「それか『その子さえ居なければ私を見てくれる?』とか言って、カリオペが殺されるかだな」

「やだっあり得そぉ」

 ゲラゲラ笑う暗殺者2人に、奴隷2人は顔を見合わせて肩をすくめた。

「ま、とにかくここは破壊するわ……少し離れとけよ」

 ゼインはちょいちょいっと手を振って3人を下がらせ、魔物に変化した。

 その後、施設内を細かく破壊すると油を撒いて火を着けた。
 施設から立ち上がる煙を見ながら、ゼインはあの日の事を思い出す。

(あん時は絶望しかなかったのにな……)

 やっぱり生きてて良かった……あの時カリーに会えて良かった……そして、そう思えるのは今、生きてるからであって……本当に生きてて良かった……そう思う。
 ゼインの中の『生』は、純粋で綺麗なまま……それを、どうにかしてあの男に伝えたい。
 ここに来るまで憎しみと恨みに支配され、あの男を殺す事しか考えてなかったゼインの心が……少し変化した。



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