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『詠子の恋』
【スポーツ 官能小説】

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『詠子の恋』-6


「やっぱり、須野原さん、具合悪いんじゃないの?」
 ゼミが終わって、塚原から改めて出された山のような課題をバッグに仕舞いこんで、それを左肩にかけた吉川が、詠子の側によってきた。既に講師の塚原は教室を後にしていて、ここには今、二人しかいない。
「ちょっと、ごめんね」
「!」
 額に、ぬくもりが生まれる。吉川の手のひらが、乗っているのだ。
「熱、あるんじゃないかな……?」
「そ、え、あ、う……」
 自分でも何を言っているのか、わからない。吉川の心配げな顔がすぐ側にあって、しかも、彼の手のひらが自分の額に添えられているのだ。手の当たる場所が、なんだか本当に、熱を持ったように感じてしまう。

 じわ…

(!?)
 額だけでなく、太股の奥も熱くなった。何かが滲み出て、ショーツに浸み込んでいく感覚がはっきりとわかり、自分の身体が起こした反応に、詠子は信じられない思いを抱く。
(わ、わたし、あそこ濡らして……!)
 自分の陰部が、性的な興奮を感じて、潤ってしまう現象…。いわゆる、“濡れる”という反応が詠子に発生したのだ。
 その原因を作った吉川の手が、額から離れていった。瞬間、詠子はとても残念な気がしたが、太股の奥にある“熱い違和感”も気になって仕方がなかった。
「そんなに高くなさそうだけど、やっぱり熱っぽいから、今日はもう帰ったほうがいいよ」
「………」
「今回の課題は、僕ひとりでなんとか頑張ってみるからさ」
「………」
「それじゃあね、須野原さん。また次のときに」
「………」
 吉川は、流れるような一連の動作を残して、教室を出て行った。
 いつもだったら、ゼミが終わった後に、図書館で課題の確認をしあって、コツを共有してから、ランチを挟んで、夕方までその課題に取り組むことが習慣になっていた。
 しかし、詠子の具合を勘違いして慮った吉川は、今日はそれを取りやめにして、そのまま行ってしまった。
(吉川クンの、バカ……)
 身体に火照りをたっぷり残して、そのまま去ってしまった吉川に、詠子は初めて、胸の中で彼に毒づいた。ゼミのある日の、吉川との時間がなくなってしまったことが、残念でならない。
 だが、身体に起こっている反応のことを思うと、どうにも彼を引き止めることができなかった。

 ぬる…

「う……」
 太股を捩らせると、はっきりとした潤いがわかる。まさか、額を触られただけで、こんなに濡れることになるとは、思いもしなかった。
(………)
 ほんの少しの葛藤を挟んで、詠子は席を立った。課題のプリントも講義ノートも、何もかもをその場に残したまま、ウェストポーチだけは手にして、足早に教室を離れると、人気の全く感じられない廊下を進んで、女子トイレに足を運ぶ。
「はぁ……」
 溜息を零しつつ、トイレの中に二つある個室の奥の方を選んで、その中に身を入れる詠子。建物が古いため、いまだ和式となっているその便器を跨ぐと、丈の長いスカートの裾を丸めながら一気に捲り上げて、薄桃色の下着を膝元におろし、その場にしゃがみ込んだ。


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