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口伝つちのこ異聞
【その他 官能小説】

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口伝つちのこ異聞-5

「ごめんなさい…あたし…」
女の声は切迫していた。体も硬直してきた。
(イクんだ…)
思った時、自分の引き金も引いていた。
 女がはっきりと口走った。
「イク!」
腹の底から絞り出された声は私の絶頂を導いた。
「うお…」
放出と女の収縮がせめぎ合い、長い余韻を引きずった。


 目覚めると女の姿はなく、かすかに朝餉の支度らしい物音が聴こえていた。雨戸はすでに開けられていて、夏の日差しが障子に切り込んでいる。鳥のさえずりと蝉の声が現実を揺り動かしていた。
(昨夜のこと…)
二度目の後、女に誘われるまま一緒にもつれるように風呂に入った。…言葉の代わりに口づけ……そして酒を飲み……ぐったりして横になったところで丹念なフェラチオが始まったのだ。……
 私はそのまま眠りに就いてもいいほど満足していた。だからなかなか勃たなかった。それでも女は口をすぼめて上下を繰り返した。
 硬くなった…と感じた時には股がった女に宛がわれ、根元まで埋め込まれた。そしてそれまでにはなかった激しい動きが始まった。叩きつけるように弾む体、ゆっさゆっさと乳房が円を描いて乱舞した。
「イッテくださいね…」
息を乱した女の声を聞きながら気が遠くなっていったのを憶えている。
(それから間もなく寝入ってしまったようだ…)

 私は頭の重い感覚にしばらく起き上がれなかった。
 居間に行くと、老婆も女も何事もなかったように朝の微笑みを見せた。
「よくお休みになれましたか?」
女の言葉は自然なやさしさに溢れていた。裏に何か含んだものは微塵も感じさせない明るい物言いである。
「今日も暑くなりそうです」

 朝食を終え、帰り際に老婆が小瓶を持ってきて新聞紙に包んだ。
「お荷物ですが、ゆうべ召しあがった酒です。気に入っていただいたので少しですがお持ちください」
そして手渡しながら、
「ご内密に…」
目を伏せて意を含めるように小声で言った。
「またのお越しを…」

 老婆と女に見送られ、歩きだしてから何度村を振り返ったことだろう。何かを引きずっているような、複雑な想いが心を去来していた。けだるさと心地よさ、夢と現。相反する想念が混然として、しかも同じ方向に流れている。理解よりも受け止めるしかない現実と事実があった。   
 

 案内板のある分岐で煙草を喫って一服していると、村の方から数人の男たちがやって来た。一人、二人、三人。各々間隔があいている。連れではなさそうである。
 若い男が通り過ぎ、少しして中年の太った男が息を切らして歩いて行った。三人目の男が行き過ぎて、私も後についた。後ろ姿を何気なく見ているうちに、その服装から昨日私の後から村に入ってきた男だと思った。

「昨夜はどちらに?」
歩みを緩めた男が振り返って言った。
「…田の屋という…」
「ああ、あそこはいい…」
「泊まったことがあるんですか?」
「ええ、去年の春。夏が川原屋。昨夜は佐渡屋でした」
来るのは三度目だという。
「三度目?…」
私が思わず立ち止ったのは言い知れぬ胸騒ぎを感じたからだった。
「なんで、こんな田舎の民宿に三回も…」
男は訝しげな顔を見せてから、口元を弛めた。

「あなたは今回初めてですね?」
私が頷くと、男は真顔になって、
「僕も初めはそう思いましたよ」
そして、
「驚いたでしょう?」
今度はにやにやと粘っこい笑いを浮かべた。
「サービス満点だったでしょう。まあ、どこもそうだけど」
男の言っている意味がわからない。
 男は汗を拭って村の方向に目をやると、私に向き直って『自分の考え』を披露し始めた。あの民宿は、売春宿なのではないか、と言うのである。

「田の屋の婆さんは嫁の相手をしてくれって言ったでしょ。川原屋は女が風呂に入ってきて背中を流してくれてね。主人が亡くなって五年になります、夜伺っていいかしらって言うんですよ」
「昨夜の宿も?」
「ええ、佐渡屋。感激でした。若い若い。渋谷か原宿にいるみたいな女の子でしたよ」
「それはどういう関係って?」
「そこのおばさんは親戚の子だって言ってましたけど、何でもいいんでしょう。夜には母屋は二人きりだし、あちらから誘ってくるんですから」
私はまだ頭の整理ができなかった。
「でも、一組限定ってことでしょう。グループで来たらどうするのかな。女の客だって来ないとは限らないし」
「ええ、ええ。僕も考えましたけど、その時は、男の客だったら食事は一緒で宿泊は別ってあらかじめ伝えておけばいいし、女、子供だったらそれはそれでいいんじゃないですか。あの料理で六万ですから。一度来れば二度と来ませんよ。そもそもホームページ見ましたでしょう?女や家族連れは来ないようなことを書いてあるんですよ」
たしかに、それは納得できる。ふと興味を覚えた一人旅の男が訪れて病みつきになるということか。この男のように、そしておそらく私も……。

 私たちは並んで歩きだした。
「しかし…」と言葉を切ってから、
「そうだとしたら、彼女たちはいくら貰うんだろう」
昨夜の行為を思い出して私は昂奮を新たにした。
「さあ…たとえば六割で三万六千。根拠はありませんけどね」
「一晩たっぷりと…。割りが合うかな」
「考え方次第じゃないですか。予約状況見ました?空いてるのは平日の一部ですよ。毎日客がある。十日で三十六万、ひと月で百八万。もっとも一人じゃ体がもたないから何人も女がいるんでしょう。それにしてもいまどき不景気で水商売だってそうは稼げない。確実な商売だと思いますけどね」
「向こうから金の要求は一切ない」
「そう、そうです。だから売春ではない。そこがうまいところです」
なるほど、そう考えるとあの濃密なセックスも理解できる。


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