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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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28 弱者の抗い (性、残虐注意)-3

「ところでよぉ、こっちはどうすんだ?」

 傭兵の一人が、不意に話題の矛先をエリアスに向けた。

「マウリさまの指示が来るまで、放置しておけ」

 騎士はそっけなく答えた。必要以上に口を聞きたくないといった調子だ。

「どうせ竜姫も、魔眼王子の人質に使うんだろ?あっちのほうなら、待ってる間に色々楽しめたのによ」

「マウリさまも気がきかねーよなぁ」

 下卑た笑いをあげる傭兵二人は、露骨に渋面をつくる騎士と、仲間とは言っても明らかに別枠だ。おそらくは人数合わせのため、一時的に雇われたのだろう。

「マウリ様の指示は、すべて意義がある!」

 若い騎士は、感情がすぐ顔に出るタイプらしい。怒りに顔を紅潮させ言い立てる。

「あの女は、もっと重要な囮役にする。コイツも多少の人質にはなるだろうが……魔眼王子から離したのは、余計な知恵をつけさせないためだ。かなり悪知恵が働くらしいからな」

(なるほど……)

 カティヤに関して、アレシュの頭に血が昇りやすいのは確かだ。それを諌められるのはエリアスだけだろう。
 悪知恵が働くと言われるのも結構。
 しかし、理解できても、このまま殺されるのは迷惑千万。納得できるものか。

「おいおい、ちょっとしたジョークだろ?騎士さまは頭が固くっていけねーな」

「金次第でどこにでも雇われる輩に、騎士道をつべこべ抜かされる筋合いはない」

 ムキになる若い騎士と茶化す二人組のやりとりに、ヨランはまるで興味なさそうだ。

「ここは煩いね。せっかくだから早く2人きりになろうか」

 魂が抜けたように虚ろなキーラを抱きかかえ、部屋をでて行こうとする。

「おい、勝手な真似は……」

 騎士の制止を、鬱陶しそうに振り切った。

「隣の部屋に行くくらい、良いでしょう?今頃、王都はもう大騒ぎだ。ここに来る暇人なんかいないよ」

「その女も、万が一の時にはジェラッド王への人質だぞ!?」

「キーラさんは僕のものですよ。これからずーっとね」

 狂気の瞳をした青年は、腕の中で身動きもしないキーラへ、愛しげに語りかけた。

「こんな不潔な所で切ったりしないから、心配しないで。落ち着いてから綺麗に処置してあげる。楽しみだなぁ」

「……勝手にしろ、狂人め。私欲で祖国を裏切るなど、吐き気がする」

 軽蔑に顔を歪め、騎士は手を振ってヨランを追い出した。

(おや、ついていますね……)

 エリアスは内心でほくそ笑む。
 ヨランのようなタイプが一番扱い辛い。逆にもっとも手玉に取りやすいのが……。

「……っくっく」

 口に布を押し込まれたまま、エリアスは身を震わせて笑う。

「あ?何がおかしいんだよ。言ってみな」

 ムッとした様子でエリアスを掴み起こし、口の布を外そうとした相棒を、もう一人の傭兵が止める。

「おい、やめとけって。コイツ、高位魔法使いだぜ?」

「大丈夫だって。おい。兄ちゃん、ちょっとでも呪文唱えたら、指を切り落とすからな。それくらいで人質の価値ってなぁ下がらないんだぜ?」

 こういった裏仕事に慣れているのだろう。よく切れそうなナイフを、後ろに回されたエリアスの指にあて、男は慎重に布を外した。
 かび臭い空気でも、思う存分吸えるだけありがたい。
 何度か深呼吸し、唇を優雅に吊り上げ、若い騎士を見据える。

「くっく……失礼。貴方はマウリの腹心かと思っていたのですが……それほど信用されていないようなので、おかしくて」

「俺が信用されていない?」

 騎士が怒りに声を低くする。

「だって、わたくしが本当は女で、マウリの元愛人だと、知らないのでしょう?」

 予想の斜め上をいくエリアスの言動に、三人は目を丸くする。



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