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天野安冶の受難
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女友達の訪問-4

「だけどお前はそいつと今は他人になってるからまだ良いよ。
俺なんか実の姉貴が3人もいて、いまだに縁が切れてないんだ」
サッシーは顔を上げると俺を睨んだ。目がちょっと濡れていた。
「だけど、その姉さん達、天野に変なことした?」
してない、してない! だけど年がら年中男を誑(たぶら)かす話ばかりしてるから、俺はすっかり雌狐アレルギーになったんだ。
「じゃあ、天野は一生女の人とは結婚しない積りなの?」
うーん……微妙だな。恋愛はしないような気がする。
恋愛は男と女の手品比べみたいなものだから。
これにはヨッシーが食いついて来た。
「なんなの、それ? 手品って」
ヨッシーそれはお前が使うことのない道具のことだ。
つまり女は女の武器を使って男を幻惑させる。それが女の手品だ。
男がどんな手品を使うかは俺は知らない。また知りたくもない。
「もし……天野がだよ。
私たち2人のうちどっちかと結婚することになったらどっちとする?」
サッシーが急にそんなことを聞いて来た。なんでそういうことを急に訊くんだ?
「って言うか、天野は僕の睨んだところ絶対結婚しないよね」
うーーん、半分当たってる。結婚なんかしたくない。だがもしするとすれば……
俺はヨッシーの方を指さした。
ヨッシーは驚いて目玉が顔からはみ出そうになった。
もともとはみ出そうにはなっていたが……。
「へっ? 私かい? どうして」
これはあくまでもしもの話しだから軽く聞き流してほしいと前置きして……
「たとえば……夜枕を並べて寝ていたとする。
すると俺が寝ているときに、むくっと起きて台所から包丁を持ち出し、俺の胸に突き刺そうとする……そんな想像が絶対できないのがヨッシー、お前だからだ。
俺が夜中に目を覚ましても、熟睡していそうな気がする」
するとサッシーが座ったまま、顔を真っ赤にして膝をドンドンと床に打ち付けた。
つまり怒ったときに床や地面に当たるのがこいつの分かりやすい癖なんだ。
「じゃあ、僕が夜中に包丁を持ち出すように見えるってことかい!?」
お前が言い出したことだから答えたんだぞ。
それにお前はつい数分前にケーキを俺の顔にぶつけたじゃないか。
半年前はいきなり俺の顔を張り飛ばしたこともあった。
こいつは気が短いんだ。だが、こいつにも良いところがあるところを言ってやらないと、折角のめでたい?席が台無しになる。
「まあ、待て。結婚するならという長期戦の場合の質問だからこうなったが、これがワンナイト・ラブの相手は?という問いならサッシーお前だよ。
一晩くらいならなんとか怒らせないようにできそうだし。
なんと言ってもお前は人並み外れた美貌の持ち主だ。だろう?」
これで少しサッシーの怒りはおさまったようだ。本当に自意識過剰な奴だ。
さらに俺はとどめをさしてやった。
「だけどなあ、サッシーを奥さんにすると気が休まらないよ。
何故なら俺と不釣合いだからだ。
俺はご覧の通り平凡な顔立ちだし、金も権力もない。
そうすると、もっと良い男とか金や力のある奴にお前を取られてしまわないかといつもやきもきして心が休まらないと思うんだ。
俺はのんびり長生きしたい性分だから、お前のタイプとはワンナイトラブだよ」
「私とワンナイトラブでも良いよ」
そう言ったのはヨッシーだ。
無理無理。その気分になるのを待っていたら夜が明けてしまいそうになる。
まあ、こんな笑い話でうまく納めたが、それにしてもケーキ1個分もったいないことをしたなぁ。

 


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