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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第13話-6

「お父さん。木戸さんが、いらっしゃいましたよ。おみやげも、いただきました」
「うむ」
 居間のドアを目の前にして、紘子の問いかけに応じた声は、いくぶん声のトーンが低いと感じるものであった。
「入ってもらいなさい」
 “大歓迎”という雰囲気でないことは、そのトーンでよくわかる。
「木戸さん、中にどうぞ。あと、結花は、わたくしとここで待機」
「え、なによそれっ」
 航に付き添うように、居間へ入ろうとしていた結花の肩を、紘子が捉まえてその場に押しとどめた。
「お、お母さん、どうして?」
「男同士の対決なのよ。野暮はやめましょう」
「た、対決って……」
 そんな大袈裟な、と言いかけたが、普段の鷹揚さがあまり感じられない母の表情に、結花はその言葉を飲み込んだ。どうやら、大袈裟ではないようなのだ。
「わ、航……」
 不安が胸に湧いて、心細い気持ちを俄かに抱えて、居間に入ろうとしている恋人の横顔を見遣る。もし、父が、この交際を認めれくれなかったら、いったいどうなってしまうのだろう、と…。
「大丈夫だ、結花」
 一方、家に来るまでは緊張を漂わせていた航だったが、いざ、対面のときを迎えたとなると、肝が据わったものか、普段どおりの冷静な雰囲気を航は携えていた。
「行ってくる」
 安心するように、と、結花に笑みかけた後、そのまま、紘子がドアを開けた先の居間へと、ゆっくりと足を進めていくのであった。
「…結花」
 航が居間に入ったことを見計らい、紘子はドアを閉じて、不安という言葉がそのまま表情になっている娘に語りかけた。
「あなた、いい男をみつけたじゃない。お母さんは、あの子なら、安心して結花を任せられるわ」
「でも、お父さんは……」
 ドア越しに聞いたあの口調は、明らかに“反対”の意思が表れていた。
「一人娘の、男親なんだもの。そこは、しょうがないでしょう」
 ひとつ息を吐いて、肩をすくめて見せる紘子。
「男親を、ちゃんと口説き落とせるかどうか…。それぐらいできないと、“一人娘”の彼氏なんて、これからもやっていられないわよ」
「………」
「それぐらい、お父さんは、あなたのことを愛してるんだから」
「わかってる…よ」
 逆説的な父親の愛情を再確認して、結花としては複雑な感情を抱かざるを得ない。一本気で、昔かたぎな一面のある父が、果たして、航のことを認めるかどうか…。
「信じなさいな。あなたが、選んだ人でしょう?」
「う、うん」
 肩を優しく抱かれたまま、結花は、ドアの向こうで繰り広げられている、男同士の対決問答の結果を、静かに待ち続けるのであった。


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