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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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解放-18

「カリオペ!!」

 頭領は叫びながら地下への階段を駆け降りる。

ガゴッ

 その目の前をレンガが舞って反対側にぶち当たった。

「!!」

 腕で頭を庇った頭領は、目に映る光景を疑った。
 地下の拷問部屋が激しく破壊されていた。
 崩れたレンガと一緒にあるのは大量の血。
 その血溜まりに黒い髪の毛が混ざっていたのだ。

「カリオペェッ!!」

 慟哭の声を上げて拷問部屋へ行こうとした頭領は、背筋に走った寒気に本能的に前に転がった。
 刹那、先程まで頭領が居た場所に、巨大な腕が叩きつけられた。

ゴシャアァッ


 その腕の正体は、まるで『狼男』のような風貌の獣。
 獣は、獅子のような長い鬣とストレートの綺麗な尻尾を持っており、灰色の毛に包まれた身体は光の加減で銀色に輝き神々しくもあった。

『グルルルル』

 犬がお座りをしているような体制の獣は、鼻に皺を寄せ低く喉を唸らせる。
 その大きく裂けた口は赤い血で染まっていた。

「カリオペ!?」

 頭領が叫んだと同時に飛び上がった獣は、頭領にのしかかって大きく口を開ける。
 綺麗に並んだ白く尖った歯が間近に迫り、頭領は目を見開いた。
 殺されると思ったからではない……綺麗に並んだ歯の間に、黒い髪の毛が挟まっているのを見たからだ。

「貴様ぁーーっ!!」

 叫び声を上げた頭領の手には、瞬時にダガーが10本も現れる。
 頭領はそれを獣に一気に投げつけた。

タタタタンッ

『ギャウッ』

 咄嗟に身体を反らした獣に次々とダガーが突き刺さるが、全て急所を外していた。

「チッ」

 舌打ちした頭領は更に懐からダガーを取り出す。

『ギャヒッ』

 獣は慌てて身を翻し、階段を上へと駆け上がった。

バキャッ

 店への入り口を破壊した獣は、蒼い目に恰好の獲物を捉える。
 それは大量の血を流しているスラン。

『グアオッ』

 獣は嬉々としてスランに飛びかかり、一瞬の出来事にスランは驚愕の表情のまま大きな顎に捕らえられた。

グシャアッ

 獣の口から派手な血飛沫が舞い、それを目撃したメンバーは思わず吐き気を覚える。

「逃がすかぁっ!!」

 地下から獣を追ってきた頭領は、瓦礫を跳び越えて怒号をあげた。
 ギンッと振り向いた獣の口の端から、スランであろう腕がブラリと力無く下がっている。

『グウウウッ』

 獣は満足気に口角を上げて、思いっきり飛び上がった。

ドガッ

 獣は頭突きで天井を突き破り、屋根に降り立つ。
 月の光をバックに、獣は頭領へ蒼い視線を向けた。

「!!」

 その2つの蒼い光の直ぐ横……長い鬣に隠れてハッキリは見えないが、確かに赤い光があった。


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