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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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解放-17

ズズン

「うおっ?!」

「何だ?!」

「わわわっ」

 建物が大きく揺れ、店に居た連中は床に転がったりテーブルや椅子に掴まったりする。

(やっと来たか)

 スランは壁にもたれながら少し息を吐く。
 その、一瞬の油断がまずかった。

シュンッ

「!!」

 空気を切る音にハッとして身体を動かしたが、時既に遅し。
 左腕に激痛が走り、スランはガクッと膝を折った。

「っ痛ぅ」

 上腕部に刺さったのは細長い片刃の剣。
 もし反応が遅れていたら、腕が肩からすっぱりと斬り落とされていただろう。
 視線を上げると、頭領が口の端を上げて笑っていた。

(くそっ)

 スランは舌打ちして剣を引き抜き、それを杖代わりにして立ち上がる。
 未だに建物は揺れ続け、店内はてんやわんやの大騒ぎ。
 その中でスランと頭領の場所は、そこだけ切り取ったように静寂に包まれていた。

「頭領!!魔物ですっ」

 しかし、それはメンバーの声で打ち消された。

「数は?」

 頭領はスランから目を離さずに状況を聞く。

「1体っす!それでカリオペが……」

「!!」

 カリーの名前が出た途端、頭領の顔色が変わった。
 足をもつれさす勢いで奥に消えた頭領に、スランは呆気にとられる。

(おいおい……マジでパパかっつうの……)

 その様子は愛しい娘を心配する父親そのもの。
 捕まえて拷問して彼女を壊してでも手元に置いておきたい……かなり歪んだ愛だが、それも愛。

「はっ……色んな愛の形があるもんだな……」

 スランは自分が手にかけた女を思い出し、ポツリと呟いて壁にもたれた。
 間違っていたが、あれも紛れもなく愛なのだろう。

「……出血多量で死ぬ前に迎えに来いよぉ……チビ……」

 ダラダラと血が流れる傷口を手で押さえながら、他人を信じて待つのも悪くない、とスランは目を閉じて建物の揺れを感じていた。



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