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アンバランス×トリップ
【ファンタジー 官能小説】

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自己嫌悪-2

 その頃、ゼインと共に山道を下っているカリーはかなり自己嫌悪に陥っていた。
 ゼインに対して怯えてしまった事が、自分でもショックだった。

 今までも何度か変な力を見せられてきたが、そこは別に気にならなかった。
 しかし、今回の憎悪に満ちたあの表情は本当に怖かったのだ。
 カリーの知らないゼインが怖い。
 だから全部教えて欲しいと思うのだが、自分だってゼインに隠し事をしている。
 隠し事どころか『カリー』自体が偽物だ。
 そんな自分がゼインの事を根掘り葉堀聞くワケにはいかない。
 だから、何も聞かない。
 ゼインが自分から話してくれるまでは……聞いちゃいけない。

 そのゼインは、道中ずっと上の空だった。
 スランの鷹の変化を見てから様子がおかしい。
 鷹が何故ああなったのか知っていたゼイン……その事に納得していたスラン。
 どうやらゼインはスランの雇い主、つまりポロの飼い主に心当たりがあるらしい。

(そういえば、スランが「雇い主の目当てはチビだ」って言ってたわね……)

 始めはポロの事だと思っていたが、スランはポロの事を『お嬢ちゃん』と呼ぶ。
 つまり、チビ=ゼインだ。

(……ポロの飼い主がゼインの元飼い主って事?)

 多分、それはカリーがゼインと『カリー』として会う前の……カリーにとって空白の2年間に飼われてた時の飼い主だろう。
 そして、あの時血まみれだったゼイン……ゼインは「飼い主を殺して逃げた」と話していた。
 『生』を大事にするゼインが、手を汚してまで命を奪った飼い主……相当、ろくでもない奴だろう事は安易に想像出来た。
 その、殺した筈の飼い主が生きていたという事だろうか?
 だとしたら、ゼインはどうするのだろう?
 カリー達を置いて逃げるだろうか?
 それとも、決着を付けに行くだろうか?
 どっちにしろ置いていかれる可能性が高い。

(置いて行こうったってそうはいかないんだからねっ)

 カリーは命がけでゼインと一緒にいるのだ。
 ゼインが居なきゃ『カリー』の意味が無い。
 どんなにゼインが嫌がろうが小細工をしようが、張り付いてでも側に居る。
 とりあえず自己嫌悪を余所に追いやって、カリーは決意を新たにするのだった。


 夕日が海に近づき、海面には赤い色が映っている。
 空は青と紫色と紺色でグラデーションを描き、後少しで月が顔を出しそうだ。
 街灯に油を入れて火をつけていく役人や、宿や家に帰る人々に混じりポロは落ち着きなく魚屋の前をウロウロしていた。

「ポ〜ロ。冷えてきたよ。中に入りなよ」

 店の片付けをしながらケイが声をかけるが、ポロは完全無視。

(ひっでぇ……)

 この数日間、2人で結構濃厚な時間を過ごしたつもりだったが、ポロはやっぱりゼイン達の方が良いらしい。
 仕方ないし当たり前の事だが、ケイは少し寂しい思いをしながらもため息混じりに苦笑する。


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