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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-14


「東の選抜チームの中に、“岡崎 衛”って、まーちゃんの名前を見つけたんや。それで、懐かしさ爆発して、つい、きてもうたっちゅうわけや」
 岡崎は、行きつけにしているセルフ形式の食堂“んまいもん屋”に、再会した清子を連れてきていた。
 それぞれが選んだ今日の食事をテーブルの上に置き、箸を動かしながら、会話をする二人である。
「同姓同名やったら、ウチ、アホまるだしやったけど、そうやなくて、ホンマによかったわぁ」
 清子はそう言って、例の八重歯を覗かせながら、嬉しそうに笑っていた。
(そこんところは、変わらないんだな……)
 通信という手段をとらずに、直接会って確かめようとする無鉄砲さは、昔のままで、岡崎はそんな清子の姿に、なぜか安心していた。
「ウチのチーム、あんまり強うないから、選ばれたんも、ピッチャーのウチだけなんよ。ホンマ、情けない話やわあ」
 話によれば、清子は、西の“猛虎リーグ”に所属している“紀南学院大学”の軟式野球部員で、チームの主戦投手を務めているという。リトル・リーグの時も、並み居る男子選手を押しのけて、控え投手の一番手だったから、岡崎としてもそれは納得のできる話であった。
 それにしても、である。
「交流戦は、もう少し後だろ? それなのに、もう、こっちに来ちゃったのか?」
 チームで動くということは、なかったのだろうかと、岡崎が思うのも当然だった。
「選抜チームの監督さんが、“現地集合”ってことにしたんよ。まーちゃんも、聞いとるよね。泊まる場所に、イーグルスの宿舎、使わせてもらえるの」
「ああ」
「監督さんな、そこまでは自力で来いって、ウチらに無茶振りしよった」
 “選ばれたメンバーなら、それぐらいできるやろ!”と、剛毅なことを言う、そんな“猛虎リーグ”選抜チームの監督であった。
 そして、各人がそのために使った経費は、“あとからこっちに領収書を持ってくりゃ、ゲンナマで、すぐに支払ったるわ”とも、付け加えていた。つまり、きちんと領収書を用意すれば、使った費用は全部持つ、という気概を見せたのである。
「凄い監督だな…」
「そやろ? まあ、逆にそれが、ウチらの“人間性”を試しとるようで、カネは安く抑えようって気にさせられるんやから、大したタヌキやでホンマ」
 清子自身、請求するのは移動費だけにしようと考えている。それだけでもありがたいことに変わりはないし、度を越えた請求をすることで、せせこましい人間だと思われたくない気持ちもある。
 早速、選抜メンバーの一員である清子にそう思わせる辺り、“猛虎リーグ”の選抜監督は、伊達に前年度優勝チームを率いているわけではないということが、岡崎にはわかった。
 ちなみに、この“東西交流戦”は、二日間の日程となっており、初日は、合同の練習日として組まれていて、本番の“試合”は、翌日の早朝に行われることになていた。試合のある日は、日中に大学野球の試合があり、夜にはプロの試合も組まれているので、このような“早朝野球”という形になっているのだ。
 その代わり、宿泊先はなんと、プロ球団リクルト・イーグルスの好意によって、球団が所有している、“神宮球場”近くの専用宿舎を宛がわれていた。築年数はいささか古いが、選手が使用することもあるところだ。
 球界関係者の誰からも慕われる、篤実な藤田会長だからこそ可能になった、望外の待遇であるといえよう。


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