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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-77

「ゴインさん、本当にオセワになりました」
「「「お世話になりました!!」」」
 試合が終わり、それぞれの羽を伸ばして、迎えた翌朝…。
 世話になった“安広寺”の清掃を手伝ってから、帰り支度を整えて、双葉大学軟式野球部の面々は、表門に集まっていた。
「よろしかったら、試合抜きで、またお越しください」
「ぜひぜひ」
 エレナと楓が握手を交わす。“相克”とも言うべき戦いを終えた今、二人の間には同じ“女監督”としての、友情に似た感情も芽生えていた。
「じゃあな、大和」
「はい、隼人さん」
「桜子さん。いずれ、また」
「うん。響さんも、元気で」
 それぞれが“好敵手”と認めた相手との挨拶を終える。響の動きがなにやら、不自然な様子だったが、桜子は、それには気がつかなかった。
 別れを済ませた後、“事務の西出さん”が運転するライトバンと、“安広寺”名義で用意してもらったタクシーにそれぞれが分乗して、高速バスの停車場へ向かう。
 ややあって、やってきた高速バスに荷物ともども乗り込んで、帰り道を行く双葉大学軟式野球部のメンバーたちであった。
「ね、大和」
「うん?」
「あの二人、雰囲気が変わったと思わない?」
 隣あって座る桜子が、耳打ちをするように、囁いてきた。
「いつの間にか、名前で呼び合うようになっちゃってさ。なんか、見ているこっちが、照れちゃうよねぇ」
 結花と航のことを、言っているのである。その二人は、当然ながら、最前列にて、これまた席を隣にして、座っていた。
「航、ちゃんと薬は飲んだ?」
「ああ、飲んだよ。飲んだ、けど……」
 高速バスが発進してから十分で、航は早くも具合が悪くなってきたようだ。
「大丈夫、航……?」
「あ、ああ……」
 なんとも、弱々しい様子である。普段の落ち着き払った航とは、まるで別人のようだ。
「結花、その……」
「なに?」
 航が、手すりに乗っている結花の手に、自分のものを重ねてきた。
「ふふ。いいよ」
 言うや、航の求めてきたものを理解して、すぐにその手を握り締めてきた。
 結花の手のぬくもりに触れて、不思議と航は、気分が軽くなるのを感じた。
「えっと……あと、ね……」
 頬を少しだけ赤らめて、結花が航のほうを伺う。
「おまじない、してあげる」
「?」
 言うや、航の座る席に身を乗り出して、軽くその唇にキスをした。
「絶対、効き目、抜群なんだから」
「そうかも、しれないな……」
 不意打ちとも言うべき、結花のキスを受けて、航は胸の動機が収まらない。隣に座る、昨日、自分の恋人になったばかりの少女の仕草に、航の心は躍ってしまう。
 それが、バスの揺れを航に忘れさせ、酔いをある程度のところで留めてくれた。
「ね、航。一個だけ、訊いてもいい?」
 航の調子が、往路よりもいささか良さそうなので、結花は彼に話を振った。おしゃべりをしていれば、今のところは治まっている酔いも、これ以上は悪くならないかもしれないと思ったのだ。
「えっと……航、わたしのこと、好きになってくれたの、いつから……?」
「逢った時から」
 こういう時の航は、本当に即答である。何の、逡巡もない。
「あ、あは……どうしよ……嬉しすぎる……」
 期待していた以上の答に、結花がどぎまぎしていた。…なんというか、もう、お腹いっぱいなんで、勘弁してください。
「なあ、結花……」
「な、なに、航?」
 今度は、航から、何か言い出そうとしている。結花は、ドキドキしながら、それを待つ。…いやほんと、勘弁してよ。
「おまじない、もう1回、してくれないか……?」
「あ、あらぁ……アンタ、結構、甘えんぼさん?」
 “でも、いいよ”と、言いながら結花は、もう一度、身を乗り出して、航の唇にキスをした。“おまじない”がもっと効く様に、祈りを込めながら…。
 相似た存在がぶつかりあう、そんな“相克”の試合を終えて、帰り道を行く高速バス。
「航……」
「結花…」
 それは、何ともいえぬ桃色の雰囲気を纏いながら、順調にその道行を、駆けてゆくのであった…。



 −続−



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