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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-7

「あー、いたいた!」
「「?」」
 一塁側観客席に陣取って、次の試合が始まるのを待つ、双葉大学のメンバーたち。
 結花と航が、自然と並んで座っていたその場所に、声をかけてくる人物がいた。
「よお!」
 それは、グレーの下地にブラックのピンストライプが特徴である、櫻陽大学のユニフォームを着た、相模大介だった。
「さっきは、やられちまったよ。だけど、次はそうないかないからな」
 敗戦の後、というには、陽気な雰囲気を持っている。後期に雪辱の機会があるから、と、気持ちの切り替えも早いのだろう。
「あんたらも、次の試合を見るんだろ? よかったら、となり、いいかい?」
 どうもどうも、と双葉大のメンバーたちに鷹揚に頭を下げつつ、結花と航の席の隣に、右手で抱えていたバッグを足元に置き、座席に腰を下ろした。
「御門先輩〜、俺〜、ここにいますんで〜!」
 よく見れば、観客席のバックネットに近いほうでは、御門一太郎と他数名の部員たちが並びあって席に座っていた。おそらく相模は、初めはその辺りにいたのだろうが、双葉大学のユニフォーム姿を見つけるや、いてもたってもいられなくなり、近くにやってきたと言うのだろう。
「お互い1年同士だからさ。試合のときは別にして、仲良くやろうぜ」
 結花と航を目の前に、相模はそう言った。やや、視線のウェイトが結花の方にあったのは、彼の関心の度合いが、女子ながら好選手である彼女に、大きく向いているからだろう。男とはそういうものだ。
「………」
 航の心に、少しばかり細波が起きた。本人も、それとは気がつかないくらいに、わずかなものであったが…。
「馴れ合うの、そっちは大丈夫なの?」
 “結構な古豪なんでしょ?”と、結花が言う。それ故に、“敵チームとは仲良くするな”という部訓などが、ありそうに感じている彼女は、昔の野球漫画をやや読みすぎているかもしれない。
「1年の俺がエース張ってるぐらいなんだぜ。そこらへんは、すげえリベラルなところだよ」
 “だから、無問題(モウマンタイ)!”と、白い歯を無邪気に見せる相模であった。実際、“敵チームとは仲良くするな”という部訓は存在しない。
 そもそもそれは、“隼リーグ”の理念にはそぐわないものであり、リーグの盟主として君臨し続けてきた櫻陽大学にあるはずのない考えであった。
「ふーん。まあ、そういうことなら」
「そうだな」
 結花と航は、相模を受け入れる。他チームであろうと、同じ野球に切磋琢磨している“仲間”なのだから、それを拒む理由はない。
 そうなれば、野球と言う共通の話題がある、同回生同士の3人である。一度、対戦をしたと言うことも含めて、話の輪がどんどんと広がり、盛り上がるようになった。
 相模がいつのまにか親しげに、結花のことを“片瀬っち”と呼び、航のことを“木戸っち”と呼ぶようになっても、二人はそれを気にする様子もなく、やがて始まった目の前の試合に集中しながら、会話が続いていた。


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