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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-33

「よっしゃ、響、よくやった!」
 一塁側のベンチから、隼人の声が響いた。最初のクリーンヒットを、“ノーヒター”として名を挙げた好投手の大和から、幸先よく奪えたことは、大いに味方を鼓舞するものだったからだ。
「HAHAHA! ワタシも、ツヅキマース!」
 ウェイティングサークルに立っていた、5番打者の能面(のーまん)が右打席に入る。身長2メートルに達する彼は、“隼リーグ”で最も長身の選手であった。
(あの小柄な響さんの後だけに…)
 別の意味でストライクゾーンを捉えづらかった。広く感じてしまうそれは、明らかに前打者の影響を受けてしまっている。
 おそらく、打順で二人を並べたのは、その影響を相手に見せることも意識しているのだろう。“多士済々”とそう言った、櫻陽大学のエース・相模大介の言葉の意味はそこにある。
「カモン、カモォーン!」
 その大きな体が、ホームベースに覆いかぶさるように折り曲げられる。いわゆる、“クラウチング・スタイル”と呼ばれる打法で、プロ野球の世界でも、助っ人選手に良く見られる打撃フォームでもある。古今東西の話で言えば、最も有名なのは、かつて東京ガイアンズに所属していた、ウォレス・フロマティ選手のバッティング・フォームであろう。
「大和、大丈夫、どんどんいこう!」
 戸惑いの中にあった彼を、現実に引き戻す桜子の励声。
(………)
 彼女が構えるミットは、能面にとって内角低めになる場所にピタリと照準が当てられていた。
(桜子……)
 投球を始める前から、ミットの位置を定めるのは、相手にコースを見破られる恐れがある。それでもなお、桜子が敢えてサインどおりにミットの位置を構えたのは、ずれてしまった大和のストライクゾーンの感覚を、取り戻させるためだろう。例え打たれたとしても、桜子はそれを自分の責任にする覚悟をしている。
(ありがとう、桜子)
 セットポジションを取り、視線による牽制を一塁走者の響に送ってから、大和はクイックモーションで、能面に対する初球を投じた。
「ストライク!」
 並みの身長を有する打者なら、高低はやや真ん中になるコースだ。しかし、高身長なだけでなく、足も長い能面にとっては、窮屈になる位置へのストライクとなった。案の定、能面はそれを簡単に見送ってきた。
「ナイスボール!」
 ストライクがひとつ決まれば、それを基準にしてゾーンを想定できる。二球目にアウトコースを要求してきた桜子のミットは、初球とは違って、コースを見破られないために、あらかじめ真ん中に構えられていた。
「Fuu!」
 能面のスイングが、アウトコースの直球に襲い掛かる。その長い腕から繰り出される、しなりの利いたスイングは、しかし、コースを半個分外れたボール球に手を出していることに気がついていなかった。

 ゴチッ…

「Oh!!」
 当たり損ないの平凡な打球が、ショートに向かって飛んでいく。
「!」
 岡崎はフットワーク良くその打球に反応して、グラブにそれを収めるやすぐさま、二塁ベースカバーに入った結花に送球した。
「アウト!」
 まずは、二塁で封殺を得る。結花はすぐに、一塁に送球すべく、体をそちら側に向けようとした。
「うわっ!?」
 弾丸のようなスライディングが、視界に入ってきた。二重殺を防ぐために、響が、結花の体勢を崩すべく、威圧的な滑り込みをしてみせたのだ。身を呈して、二死になるのを防ぐための、走者としては常套のスライディングである。
(やってくれるじゃないの!)
 高校時代、そういう場面を何度も経験してきた結花だ。女子と同じフィールドに立つことを快く思わない狭量な選手からの、あからさまな走塁妨害行為を想定していた当時の監督である美作から、そのあたりの状況に応じた守備についてはみっちりと仕込まれている。
 結花は斜めの視界で一瞬、雄太の構えるミットの位置を脳裏に入れると、自分に向けられたスライディングの回避に思考の重きを置きながら、体を宙に浮かせて、そのまま送球行動を取った。
「!」
 スライディングを華麗な動きでかわされるや、響が一塁の方を見る。
「アウト!!」
 打者走者の能面は、長くともそれほど足が速くないので、ツーバウンドの送球をもってしても、余裕を持ってアウトに仕留められていた。
「……っ」
「惜しかったですね。でも、勝負にかけるその気迫、わたし、好きですよ」
 おとなしい顔をしていながら、なかなか好戦的なスライディングをしてきた響に、結花はむしろ好感を抱いていた。だから、スライディングの姿勢からなかなか立ち上がらない響に手を差し伸べて、その体を起こす手助けをした。
「ありがとう、結花さん」
「どういたしまして、響センパイ」
 一宿一飯の恩義もあり、また、響がこの試合に懸けている想いの強さも知っている。だからこそ結花は、いつも以上に気概を込めて、この試合に臨んでいるのだ。
 しかし、その中にあったとしても、戦う相手への礼儀は、忘れてはなるまい。
「ストライク!!! バッターアウト!!! チェンジ!!!」
 結花の好プレーで勢いを得た大和は、6番打者である相手チームの主将・仙石(せんごく)を、“スパイラル・ストライク”を使うことなく三球三振に打ち取った。
 この回は、安打こそ喫したが、大和のエンジンもそのかかり具合が良くなってきた事を、仙石からの奪三振で、存分に知らしめた。


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