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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-22

「御院の姉御な、明日の試合をかなり楽しみにしてるんだ」
 本堂でのミーティングを終え、供してくれた夕飯を済ませ、桜子、大和、結花、航の四人は、隼人と響も連れ立って、上の宿坊に戻ってきていた。例の五十段もある階段は、腹ごなしには丁度いいくらいで、負担にならないところが、この六人の凄みでもあった。
 宿坊に着くなり、“茶でも馳走するぜ”と言う、隼人からの申し出を受ける形で、四人は6畳ほどの和室に、その身を落ち着かせた。いわゆる、隼人と響にとっての“居間”というべき空間に、お邪魔しているわけである。
「ウチとあんたら、よく似てるチームだからって、何度も言っていたよ」
 隼人は、ほうじ茶を六人分、急須から丁寧に注いで、それぞれ皆に差し出す。
「こちらも、どうぞ」
 ややあって、響が“お茶請けに”と、漬物を小皿に取り分けて、卓袱台の中央にそれを置いていた。本堂で頂いた夕飯でも添えられていたが、野菜の旨味と塩加減が絶妙なハーモニーを奏でている、絶品ものというべき漬物であった。
 ちなみに、夕飯は、五穀米、豆腐、山菜、乾物がメインとなった、“精進料理”に近い献立であった。ボリュームは確かに感じられなかったが、油を使っていない分、腹にもたれず、胃腸の調子を整えるには最適なもので、試合前日にはむしろ丁度いいぐらいのメニューと言えた。
 隼人に供されたほうじ茶も、点前をしっかりと整えられたものなので、今まで味わったことのない、芳醇な味を嗜むことができた。漬物とも、非常に合う。
(それにしても…)
 二人が“許婚(いいなずけ)”であることは、本堂での話で既に聞き及んでいたことだが、こうやって、共同してもてなしの用意をしている姿を見ると、既に“夫婦”と言っても差し支えないような空気を感じさせるものがあった。
「天狼院さんは……」
「おっと。飯を一緒に食った仲じゃねえか。隼人、とそう呼んでくれよ。なあ、大和」
 大和は、それなら、と改めて言葉を整えた。
「隼人さんは、こちらに来てもう長いのですか?」
「そうだな。俺が、預けられてた施設から来たのは、たしか、十を過ぎたぐらいだったから、もう十年くらいにはなるのか」
 隣に座る響に、“そんなもんか?”と聞く隼人。響はそれに合わせるように、深い頷きで答を返していた。
「そのときから、その、お二人は“許婚”だったんですか?」
 今度は桜子が問いをかけてきた。“結婚”を連想させる言葉に関心を示すのは、年頃の乙女として当然のものだろう。結花もまた、興味津々と言う様子を隠していない。
「先代にはっきりそう言われたのは、十五になってからだ。だから、“許婚”っていうよりは、“兄妹”みたいなもんが、今も抜けなくてな。響なんか、未だに俺のことを、“兄ぃ”って呼ぶんだからよ」
 隼人が、鼻の頭を搔く。どうやらそれは、照れたときに見せる彼のクセらしい。
「まあ、響を将来、俺の“女房”にするって言うのは、間違いのない話だ。それは、誰にも譲る気はねえ」
「は、隼人兄ぃ」
 響が、顔を真っ赤にして、照れたように俯いていた。…なんというか、ご馳走様です。


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