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進め!日比谷研究所
【コメディ 官能小説】

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進め!-8

 乙女の……いや、年上の女性としてのプライドか。次回は負けないと息巻く朋子。
 次回もセックスのチャンスがあるとは、春樹にとっては幸せなことなのか。それとも不
幸なことなのか。それは今の時点では分からない。

「……むふ。今回の発明も素晴らしいモノが出来たな」
「今度は一体、どんな物が出来たんですか?」
 嬉しそうに完成品を見つめる朋子に春樹が話しかける。
「知りたいか? あたしの発明品がどんな物なのか知りたいのか!?」
 やけにテンションの高い朋子が出来を知りたいのかと、問いかけてくる。こうして春樹
に問いかけてはいるが、内心説明したくて堪らないのだ。
 早く自分の発明品を見せ付けたい。早く自慢したい。そんな欲求が朋子に襲い掛かっている。
 その気持ちは科学者としては当たり前の感情なのかもしれない。
 そんな気持ちを隠すことなく、朋子は春樹へと問いかける。
「あたしの素晴らしい話が聞きたいのだな?」
「……はい、まぁ」
「何だ、そのやる気のない返事は。もっと期待を込めてあたしに聞かぬか」
 春樹の気の抜けた返事が気に入らなかったのか、もう一度返事するように求めてくる。
「それではもう一度いくぞ。春樹はあたしの発明品がどんだけ凄いのか知りたいよな?」
「は、はい! すっごく知りたいです!」
「……若干、わざとらしいがまぁよい。それよりも説明をするのが先だからな」
 芝居がかったわざとらしさは抜けなかったものの、最初の反応よりはマシと判断した朋
子は自身の発明品を手に取り説明を始めた。
「この何の変哲も無い水のような薬。これを飲むとたちまち胸が大きくなる代物だ!」
「な、なんだってーっ!?」
「うんうん、なかなかいい反応じゃないか。それでは説明を続けるが、これを一口飲むと
あら不思議、バストアップしてしまうのだ。世の女性の悩みをズバリ解決してしまう究極
の夢のアイテムなのだ!」
 高らかに発明品を天高く掲げる。その表情は自信に満ちており、世紀の発明品だと言わ
んばかりの表情をしている。
 そんな朋子の姿を見ながら――特にある一部分を見ながらぼそりと呟く。
「あぁ……博士の胸、小さいですもんね。そりゃ、夢のアイテムですよ……」
「ああぁ゛!? 春樹、お前は今なんて言ったんだ? もう一度言ってくれないか? あ
たしにきちんと聞こえるように大きな声でもう一度!」
 世の中には触れてはいけないモノというのが存在する。
 例えば上司の不倫関係の話であったり、やや強面のオッサンの職業だったり、闇に紛れ
た歴史の裏側だったりと触れないで知らない方がいいことなんて、山ほど存在する。
 その中の一つに、胸が小さい女性に対する胸の話題というのがある。
 小さくても気にしない人は居るし、全てがそうではないのだが、当然自身の胸の小ささ
をコンプレックスに感じている女性もいる。
 そして、日比谷朋子。彼女は自身の胸のサイズにコンプレックスを感じている側の女性
で、胸が小さいと言われるのが何よりも嫌いなことだったのである。
「春樹。あたしは器の大きな人間だ。素直に何を言ったのか言えば、許してやらんこともないぞ?」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ、本当だ。多少ボコボコに殴るくらいで勘弁してやろうて」
「それ、全然許してないですよね? 完全に怒ってますよね!?」
「怒るに決まっておろう! 貴様は触れてはならぬものに触れてしまったんだぞ! 大体
女性に向かって胸が小さいだなんて言うか普通。なんてデリカシーのない男なのだ!?」
「は、はい……すいません」
「そんなんだから、あたしが筆下ろしをするまで童貞だったのだ!」
「うぐ――っ!」
「童貞でヘタレで、パンツ好きの変態なのだ!」
「うぐぐ……」
 グサグサと的確に春樹の心を抉っていく。胸が小さいと言われたことによる復讐と言わ
んばかりに春樹にとって痛い言葉をぶつけていく。
 この時点でお互い様のような気がするが、朋子にとっては関係がない。とにかく春樹で
ストレスを発散しないと気がすまないのだから。
「ふ、ふん……本来ならばもっと罵声を浴びせてやらないといけないのだが、あたしは心
が広くて器の大きな女だからな。これくらいで許してやろう」
「……あ、アリガトウゴザイマス」
 投げやり気味に感謝の言葉を述べる。数多くの罵声を浴びせられて春樹の心は折れてしまっているのだ。
 だからつい、投げやりな反応になってしまう。
「うむ、それでいい♪」
 しかし、それでも満足そうな笑みを浮かべる朋子。春樹でストレスを発散したのが効い
ているのかもしれない。
「それでこの薬なのだが、これを使えばあたしもバインバインのおっぱいに……♪」
 ぐふふ……とやや気持ちの悪い笑みを浮かべる朋子。憧れの巨乳になれるという現実が
朋子の精神を不安定にしているようだ。
「春樹。お前もこのあたしの世紀の発明の目撃者になるのだぞ」
 そう言って、水のような薬をごくりと一気に飲み干す。
「ん、んぐぐ……」
 急に具合が悪そうにしゃがみ込む朋子。
「は、博士っ!? 大丈夫ですか!?」


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