投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

紅館の花達の最初へ 紅館の花達 41 紅館の花達 43 紅館の花達の最後へ

紅館番外編〜大公爵結婚騒動〜-5


『もう! ちゃんと考えて下さいね。
………良いです、私が教えますよ。』
アルネはまるで母のような表情でそう言った。
『…ありがとう、アルネ…
本当に君はいろいろといっぱい感謝している…』
『………ま、まぁ、そう改まってお礼しないでくださいよ。 ……私は紅様のお役に立てるのが嬉しいんですから…
あ、もう着きましたね、私、先に行きます。』
アルネはちょっと頬を赤らめながら火竜館に駆けていった。
空はもう星空だった。


夕食を適当に食べ、自室に戻ると明かりが消えていて、静まりかえっていた。
『あれ…? シャナ?』
暗闇の中、部屋を見回すと窓際にシャナが立っていた。
『紅様………』
『どうしたんだい? 明かりも付けずに…』
小さく念じて、ロウソクに火を付けた。
『さ、もう寝よう。 寒いだろう?』
シャナは静かに頷くと、隣の寝室へ向かった。
白いシーツのベットに横になり、毛布を被る。
『さぁ、シャナも入りなよ。』
手で招くとシャナが遠慮がちに入ってきた。
そんなシャナとは少し距離を置いて、私は寝ている。 昨日、抱擁を拒否されたので今夜は何もしないつもなのだ。
『紅様…』
『ん? なんだい?』
シャナは此方に向いて寝ていた。 上目使いな目には何処か怯えたような感じがした。
『…お城でのお話は…どうでしたか…?』
『ん…あぁ、そうだった。』
ムクリと体を起こしてシャナを見る。 シャナも釣られて体を起こした。
『ちょっと…話があるんだよ、シャナ。』
右手で自分の頭を掻く。 私はちょっと困った表情を浮かべていたはずだが、それはすぐとっても困った表情に変わった。

シャナが泣いているのだ。
『…お願い! 私を捨てないで下さい!』
瞳に涙を浮かべたままシャナが私の胸に抱きついてきた。
冷たい…シャナの服の袖が濡れていた。
まさか、暗闇の中で泣いていたのだろうか?
『シャ、シャナ!?』
『お願いします…どうか…どうか… 何でもします、メイドでも…
抱いてくださらなくても結構です、どうかお側に居させて下さい!!』


私の胸にも冷たい感触が感じられた。 シャナの涙が染み込んでいるようだ。
『シャナ? ちょっと、何を言っているんだい?』
『自分勝手なのは分かっています、でも、でも私、紅様が居ないと……駄目なの!!』
『あぁ! もう、落ち着いて!』
指先でシャナの顔を上に向かせる。
涙がポロポロと頬を溢れていた。
『私はシャナを捨てたりはしない。
ねぇ、なんでそんなに泣いているんだい…?』
シャナは鼻をすすりながら、少しづつ話始めた。
『紅様が……ヒック…エレン姫様と………ズズ…結婚…するって。
だから……ヒック……私は捨てられちゃうと……ヒック……思ったんです……』
どうやらかなり勘違いしているようだ。
『……私はエレン姫とは結婚しないよ。 私にはシャナが居るからね。
ほら、泣かないで。』
指でそっと涙を拭く。
『ほん………とう……?』
『あぁ、本当だよ。』
そう言って笑いかけると、シャナはまた私の胸の中で泣き出してしまった。
だが、今度のは嬉し泣きだったようだ…


紅館の花達の最初へ 紅館の花達 41 紅館の花達 43 紅館の花達の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前