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季冬
【その他 官能小説】

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花ノ章-1

三、


 いつもは一人で寝ているこの場所に、今夜は二人で居る。
しかも、蒲団の上で正座して対面しているという異様な光景である。
「一緒に寝ては駄目ですか…?」
枕を両腕に抱え込んだ紫苑が、訴えかけるような目で見つめてくる。
「ですが…」
 蘇芳は困惑した表情で、彼女の視線を何とか受け止める。
「こんなに広い家に私達二人だけで、やっと思いが通じ合ったのに…一人で寝なければならないなんて淋しいです」
 紫苑の言葉が、切々と蘇芳の胸に迫る。だが、その願いを聞き届けるわけにもいかない。
「一緒に寝てしまえば、私は…邪な思いで貴女を穢してしまうかもしれない。それが怖いんです……わかってくれませんか?」
 気持ちを確かめ合ったのはほんの今朝の出来事なのに、彼女と交わるにはまだ早すぎると蘇芳は感じていた。
 蘇芳の言葉を聞いて、意を決したように紫苑は口を開いた。
「何がいけないんですか…?愛し合っている者同士、そう思うことは自然なことでしょう?邪な思いなんかじゃないです…。だって…」
一瞬、躊躇逡巡したように間を置いたが、紫苑はすぐに言葉を続ける。
「今、こんなに蘇芳さんを欲しいと思っている私の気持ちも穢れているなんて…思いたくありません…。私は、何年も前から蘇芳さんのことを思って…」
最後の方は、消え入りそうな程小さな声だった。
この言葉で、彼の心に蟠っていた迷いは一気に霧散した。
「私は本当に腑抜けた男です。女性の貴女にそこまで言わせてしまうなんて…」
俯いた紫苑の、膝の上で堅く握られた両手をそっと包み込む。
「え…?」
 紫苑が顔を上げたその瞬間、蘇芳は彼女の紅い唇を自分の唇で塞ぐ。
唇を通して、彼女の温かさが伝わる。
「!?」
 突然の接吻に彼女は驚きを隠せないようで、目を瞬かせている。
「私は狡いですね。本当は貴女を求めて止まないのに、いつまでも自分の気持ちを押し隠して…」
「蘇芳さん…」
「抱いても良いですか…?」
 その刹那、彼の瞳に熱が宿り、端整な顔立ちが一段と引き締まったような気がした。
いつも優しくて穏やかな彼の男の一面を垣間見て、紫苑の胸が高鳴る。
 返答の代わりに、彼女は蘇芳を抱き締めた。それに応えて、彼も彼女の体に腕を回す。
華奢だが温かく柔らかい彼女の体、ここまで肌を寄せないと気付かない程度の微かに香る柑橘系の香水の香りが心地良かった。
 もう一度、彼女の唇に口付ける。紫苑は目を瞑って、それを待ち受けていた。
一旦、口を離して息をついた後、唇を重ね合わせて、今度は舌を絡め合う。
紫苑の口内の粘膜に舌を這わせると、彼女は少々苦しそうに顔を曇らせるが拒みはしない。
離れては求め、それを繰り返すうちに細い銀糸が二人の間を伝う。
互いの唇を求め合う音が、静かな部屋の中にこだまする。
紫苑は白い頬を赤らめ、潤んだ瞳で真っ直ぐ彼を見つめてくる。
その度に、抑え難い衝動が彼を突き上げるが、今はそれを抑えなくとも良いのだ。
彼女を欲するという情動の赴くままに、彼の体は動く。
紫苑の襦袢が緩んで、首筋から鎖骨にかけて素肌が露になる。
細い肩に口付けると、紫苑の体が微かに震えた。
肌蹴た襟元から片手を差し込んで、膨らみを優しく包み込むと、緊張からか、彼女の体はさらに震える。
男の割に蘇芳の手はあまり骨ばったところがないが、やはり手の平は紫苑のそれよりもだいぶ大きかった。
紫苑は改めて彼は自分と違う、“男”なのだと認識させられる。
胸を愛撫していた手を襟元から抜いた後、蘇芳は彼女の襦袢をゆっくりと下ろしてゆく。
彼女の上半身が全て晒された。
白くて肌理の細かい肌を、蘇芳は純粋に美しいと感じる。
表情は咲き乱れた花のように優美で、且つ蒼月の如く妖艶で…このまま見つめ続けていると彼女に心を奪われてしまいそうだ。
いや、もうすっかり魅入られているか…。
蘇芳は、柔らかく量感のある紫苑の胸を下から持ち上げるように両手で優しく揉みしだくと、彼女は微かに吐息を漏らした。
「…どんな感じですか?」
指先で乳首を転がしながら彼はそう問い掛ける。
そこはもう勃ちきってすっかり堅くなっており、弾力が彼の指を押し返す。
「…気持ち、いいです…」
ますます頬を赤らめて、紫苑は小さく返事をした。
「だったら、我慢しないでもっと声を聞かせて下さい。私をこんな気分にさせたのは紫苑さんなんですから…」
甘い快感と共に耳元で響く蘇芳の甘い声に、紫苑は惑わされてしまいそうになる。


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