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映画館にて
【同性愛♂ 官能小説】

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映画館-3

でも待てよ、温泉じゃ大勢人がいるし、第一フロントの人が怪しむんじゃないか?いっその事ラブホに連れてっちゃったらどうかな?そしたら体を綺麗にしてやってから思いっきり甘えられるかも知れないし。よし、声を掛けてみようか。

でも住んでる世界があまりにも違いすぎる、今までこの手の人種に接した事はないし。男の傍に近付いたけど。やっぱり躊躇してしまった。

でも思い切って傍に近づいてみた。僕はすこしドキドキしながら恐々と、ちょっと上ずったかすれた声をかけてみた。

「あのー、おじさん」と。すると男は何か薄目を開けて僕を見た。僕は後悔した、やっぱりやめとこうか、と。でもここまで来ちゃったんだから行くところまで行ってみるか、と云うことで。

「ねえ、おじさん、寒くない」「たまにはお風呂にでも入りたくない?」と聞いてみた。

すると「あんた誰、福祉の人?何の用だい」と言った。ちょっとろれつが回らない感じだったが意外にしっかしりした話し方だ。

「そりゃ、風呂にも入りたいさ、あったかいベッドで寝たいしね」と、特になまりも感じられない。

「じゃ、僕と一緒にお風呂入りに行きませんか?」と聞くと、「ああ、行きたいよ、連れてってくれよ」と言った。半分冗談のつもりで言ってみたけど、予想外に素直な答えに僕は少し狼狽して、「あ、すいません、やっぱ僕ちょっと用があって」とか言い逃れしてその場から逃げちゃおうかと思ったけど、ここまで来ちゃったし。

「じゃ、行きましょう、おじさん歩けるよね」と聞くと、「おう、歩けるよ、金が無いだけだよ」と言った。そしてのっそりと立ち上がると今まで座っていた薄汚れた段ボールを小さく折りたたむと、私物の入った大き目の黒いビニール袋に入れ、壁の隅に押し付けた。そして「又ここに戻るから、ここに置いとくよ」と言った。

男は立ち上がると僕より少し背が高く大柄で、何を食べているのか知らないが結構太っていてがっちりしていた。着ているジャンパーやセーターは汚いが背筋も伸びて足腰もしっかりしており、あの映画館で僕の隣の席から立ち去っていったあの男に何となく感じが似ている様な気がした。

僕は男と一緒に地下街を抜けて地上に出た。汚いので少し離れて男と一緒に歩いていると男が何か頼りになりそうで甘えたくなってきた。どこのホテルに行こうか迷ったが、昔電車から看板を見たことのあるラブホを思い出し、駅の改札で男の切符を買ってやり山手線に乗った。外を見ながらホテルの看板を見つけ、次の駅でおりた。


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