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ビターチョコ
【青春 恋愛小説】

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ビターチョコ-4

 カップルになったばかりの二人が、何処かへ消えた後も、まだ真理は木陰にうずくまってる。
俺はそっと後ろから近付き、置いてあった紙袋を拾い上げると、その物音に気付いた真理が、顔を上げた。

「いや〜なんつったらいいか…、告る前に結果が分かるのって辛いよなぁ〜…」自分がそうだから。
…なんては言えない…。

真っ赤な眼が点になっている真理をよそに、話を続けた。
「でも、残念だったなぁ…せっかく作ったのに……」

俺は紙袋を広げ、中の箱を取り出した。
「あ、もったいないから…俺が喰うよ!!」

慰めの言葉……見付からないから……。

真理の返事も待たずに、綺麗に包まれていた包装紙を無造作に剥がし、箱を空けた。
「おぉ!美味そう!!」

真理は不器用なんだ…。

形は少々いびつ……。

けど…頑張って…一生懸命ガンバって作ったんだな…。

感情が……零れそう…。

「いっただきまーす!」
チョコを一つ摘んで、勢い良く口に入れる。

…溢れそうな感情と共に飲み込む…。

「……うぁ!美味い!!」
お世辞でも何でもないよ。
ホントにそう思ったんだ。

だから…その分、切なくて…。

だから…はかなく、可愛くて…。

「こんなに美味いのに食べられないなんて、長谷川もバカだな〜!!」

精一杯のフォロー…。


イマノオレニハ、コレガゲンカイ……。





「…ヒドイ…」

真理の消えそうな囁きで、やっと気付く…。

少女の瞳からは…大粒の雫が零れていることに…。

…バカは俺だよな…。

一生懸命作ったチョコを食べちゃうんだもんな…。

心のどっかでは、失敗したのを喜んでたり…、もう渡せないようにって、考えてたのかもな…。
あはは、サイテーだな…俺って……。

「せっかく…」

多分…いや、きっと嘆きの言葉が続くんだろう…。
どんな言葉も覚悟する…。

「せっかく…ちゃんと渡そうと思ってたのに!!」


まだ…諦めていなかった…それがどんな罵声よりも、俺の心を引き裂く…。


今になってやっと気付く。こんなにも俺は、真理が好きだったんだって…。


「…ご…めん…」

では、済まされないのは解ってる…。
でも、立っているのかも、どこを見ているのかも分からない俺の、やっと出てきた言葉がそれだから……。

絶交さえも覚悟するよ…。

「タケちゃんに…」

くる!体中が緊張して強張る。

「タケちゃんに…ちゃんと渡そうと思ってたのに〜!!」


「……はい?」
予想外の言葉…。
なんともマヌケな返事…。

「だからぁ…それ、私からのバレンタインチョコなんだって…!」

おっしゃってる意味が、よく理解出来ません。
頭ん中に核爆弾が堕ちて、思考がパニクる。
「……ふぇ?」
ドンドン、パチパチ、ぐーるぐる。

「もぅ…私はタケちゃんが好き!!…なの!」

なぁんだ!そんなことかぁ。…………って!
「マジですかぁ!!?」
人生で一番驚いたのはコレでした。

「え!でも、お前…さっき失恋して泣いてたんじゃぁ…?」
「違うよ」
違うんかい!!

「じゃあ…なん…で!?」人生で一番不思議に思ったことはコレでした。

「あの二人、上手くいってよかったなぁ〜って思ってたら…」

だいぶ、大きな勘違い…。


「…ねぇ?返事…は…?」

返事…そりゃ、もちろん!「そりゃ、もちろんOKだよ!喜んでだよ!!だって俺、真理好きだもん!!」

舞い上がっちゃって、なーんも考えてなかったから、小学生みたいな返事の仕方しちまった!
こん時のお互いの顔、茹でたタコより赤かったハズ。

「やっと叶った…嬉しい!…これからもよろしくネ!タケちゃん!」

真理の笑顔…メチャメチャ可愛い!!
やべ、顔合わせらんねー。

「こちら…こそ」
今になって、やばいハズかしー!


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