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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第8話-13

 左足でプレートを踏み込んだ雄太は、桜子の出す初球のサインに目を凝らす。
「………」
 それは、内角低めのカーブだった。そして、雄太が同じように、投げたいと思っていたボールでもあった。
(いいキャッチャーになったもんだぜ)
 一年の間に、桜子は劇的な成長を遂げていた。
 もともと桜子には、身体的な能力でも捕手としての資質は強く感じていたが、相当の努力もしてきたのだろう。経験と研鑽を積む中で、春先とは比べようもないくらい、彼女の構える姿には、安心感を生むどっしりとしたオーラが備わっていた。
 雄太は振りかぶり、太目の体とは思えないぐらいの柔らかさを感じる一連の投球フォームで左腕を振って、その第一球目を投じた。
「ストライク!」
 彼にとっての代名詞である、大きく曲がり落ちるカーブが相手の膝元に決まった。
「ナイスピッチ!」
 それをしっかりと受け止め、桜子が返球してくる。グラブに受け止めた時、力強い音と手応えが鳴ったのは、彼女の気概が込められていたからだと思った。
 二球目。同じくインコース。ただし、球種はストレート。それもまた、雄太の考えと同じものだった。
「ストライク!!」
 同じコースで、スピードの違う球を見せるということは、緩急を相手の脳裏に焼き付けるということである。そして、初球にカーブを使うことで、二球目のストレートをより速く感じさせるための布石を、桜子は忘れていなかったということだ。
「ストライク!!!」
 三球目は外角へのカーブ。際どいところになったのだが、審判がストライクを取ってくれた。ちなみに雄太には、大きく曲がり落ちる緩いカーブと、ストレートに近い球筋からスライドするように変化する小さなカーブの2種類がある。そして今回投じられたのは、後者のカーブであった。
「バッターアウト!」
 相手打者は様子見のつもりなのか、手を出してこなかった。もっとも、手を出したところで、決まったコースを考えれば、凡打になった確率は高い。
「ワンナウト、ワンナウト!」
 桜子の快活な声がグラウンドに響き渡る。その声に励まされるように、続く相手の2番打者を雄太はセカンドゴロに打ち取った。一転してアウトコースへのストレートを主体にしてカウントを整え、最後は“小カーブ”を使って相手のバッティングを崩したのだ。
 3番打者は、左打席に入った。
(おっ)
 対して、桜子の要求してきた初球は、内角高めのストレート。球威がなければ危険なコースとなるだけに、雄太は逆にチャレンジャー魂を煽られ、力が漲ってくるのを覚えた。それを計算に入れているとしたら、桜子はやはり肝の太い捕手といえる。
(相手にケンカを売る球だからな)
 角度の関係上、左腕投手が左打者に向けて内角を責めるということは、相手打者にとっては、背中からボールが来るような感覚になる。しかも高めにそれを投じるということは、より相手の身体近くにボールを放るということにもなる。
 コントロールミスをすれば、デッドボールになる可能性も高い。だが、そうならないことを桜子は信じているし、雄太もそれに応えるだけの制球力を持っていた。
「ストライク!」
 ホームベースよりに立っていることもあり、相手打者は幾分腰を引いた様子で初球を見送る。だが、ベースを確実に通過したストレートは、主審の腕を突き上げさせて、それがストライクであることを声高に宣告していた。


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