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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《放課後の音楽室》-7

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 山形先生が婚約したと聞いたのは、彼女のアパートに泊まった翌日の事だった。前日と同じように車とバイク、個々で登校して来た俺達。教室にはいると、待ってましたと言わんばかりに何故か隣りのクラスのイチコが声を弾ませて来た。
「山形、婚約したんだって!ビックニュースよ!キョースケ!」
 イチコの話によると、婚約者は以前にお見合いした作家の娘だそうで、市立図書館で司書をしている知的美人だそうな。
 山形先生と言えば、授業や部活中はキリッとしたスーツに白衣をまとい、ノンフレームの眼鏡の奥の切れ長の瞳は冷静さと穏やかさが滲み出ている…と評判。まぁ、簡単に言えば、凄く格好良くて一見近寄り難そうなんだけど、実際は凄く優しくて女子のかなりツボ!…らしい。そんな山形の噂だ。広まらない訳が無い、と朝からやかましくイチコが声を弾ませて来た。
「これでコンクールに集中出来るねっ」
って…なるほど。
「確かに元凶が落ち着けば騒ぐ事も無いだろうな」
「でしょでしょ!じゃあ情報料!」と頭を傾けた。
「うむ。ご苦労なり」
わしわしと撫でる。外ハネのセミロングが揺れる。
「へへっ!じゃあ…放課後ねっ」
「おぅ」
片手を上げ、隣りのクラスに帰るのを見送った。
「苺ちゃん、可愛いなぁ。」
「これぞ恋する乙女って感じ」
 口々に感想を述べたのは腐れ縁の悪友…陸(りく)と最近やっと付き合い始めた雛(ひな)ちゃんだ。二人して俺の前の席に陣取り話を聞いていた様だ。
 こう言っちゃ悪いが、二人が付き合い始めたと聞いて初めはムカついた。亜依ちゃんを捨ててすぐにかよ!(陸の元カノ)って思ったけど。しかし実際、陸は入学当初から雛ちゃんの事が気になっていて、しかも最近付き合い始めるまでそれが恋だとは気付かなかったと言う鈍感さだ。亜依ちゃん、別れて正解だったよ。と今は言いたいくらいだ。と、まあ…そんなズボラで鈍感で馬鹿な野郎にこんな出来のいい雛ちゃんがくっついたと言うのも信じがたい。雛ちゃんは言わば、このクラスのお姉様だ。成績優秀で美人でクール。感情はあまり表に出さずに落ち着いていて、女子の相談率百%!てな感じだ。(あくまで俺の想像だが。)まぁ、この二人がくっついて驚いたのは俺だけじゃなかったのは確かだったようだ。
「可愛そうに…鈍感男が気付く筈もないのに」
「それは言い過ぎじゃない?」
「いんや、このアホたれには今ぐらい言っても、気付かないんだから平気だって。」
「おい、鈍感男とかアホたれとか…もしかして俺の事かな?陸君」
「いで、いででででっ…ぢょーだんだって!ぎぶぎぶ…」
 背後からのチョークスリーパー(いわゆる、腕で首を締めるような技)を緩めた。
「ったく、余計な詮索するなよなぁ」
「詮索じゃねぇよ。見てたら解るくらい、苺ちゃんはなぁ!」
「陸」
 雛ちゃんは陸を完全にコントロールしてるんだな。見ていて微笑ましい。陸は制止され口ごもった。
「わかってる。だけど、イチコは何も言わないから俺も何も言わない。」
「先には断れないものね」
「ま、そういう事だ」
 陸は納得いかず、眉をしかめている。まだまだ子どもなのだ。まぁ、恋を知ったのも最近なのだから仕方が無いのだが。
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