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ガラス細工の青い春
【純愛 恋愛小説】

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-3

 弁当を広げながらやにわに口を開いたのは清香だった。
「あのさ、さっき圭司と会話したから。って事を報告しとく」
「えー!!」
 素っ頓狂な声は奇麗なユニゾンで教室内に響き、清香は「うるさいっ」とピシャリ言う。
「何でそんな事になったの?」
 幸恵は何だか座り心地が悪そうにもぞもぞしながら清香の方へ顔を寄せるので、清香は「顔近いよ」と苦笑しながらと手で遠ざける。それでも幸恵は物欲しそうな子犬のように目をキラキラさせている。
「体育館でね、圭司以外が連れションに行っちゃて二人きりになったから、そういう雰囲気になって喋ったってだけ。と言うわけで、以降は気を遣わなくていいから」
 パチン、と手を一度叩いた咲は、はち切れんばかりの笑顔で「あとは告白だけだね!」と言って白米を頬張った。随分飛躍した思考に、清香は目眩を覚える。
「それはずっと後の話だし、ずっとしないかも知れないし、今話す事じゃないでしょ。どっちかってと咲が清水先輩に告白する方が先でしょ」
 清香の言葉に頷き、少し頬を赤らめながら咲は一口お茶を飲むと、意を決したように言い放った。
「私、決めた。今日清水先輩を呼び出して告白する!」
 あんぐりと口を開けた三人の口から「マジで言ってんの」と足並みを揃えたように声が出た。
「マジです。大マジです。優斗にお願いして呼び出してもらおーっと」
 今からかよ、と留美が突っ込むが、咲の頭の中はもう告白の事だけで占められているようでその後の会話は上の空。食堂から戻った優斗が教室に入ってくるなり「優斗!」と席に呼び、約束を取り付けている。咲曰く、清香が勇気を出して圭司と話した事が、告白への勇気に繋がった、との事で、勿論清香は勇気を出して圭司に話かけた訳でもなく、咲を勇気づけたつもりも更々なく、この告白が失敗に終わったときの事を考えると酷く憂鬱になった。
 清水先輩を呼び出すと約束した優斗は咲に向かって「頑張れよ」とだけ言い、視線を清香に移す。
「清香、お前やっと喋ったみたいだな、あいつと」
 口の中身を嚥下すると「誰かさんのウンコのお陰でね」と清香がわざとらしい笑顔と共に付け足す。優斗は意味深長に笑いながら掃除用具箱の前にある自席に歩いて行った。
「え、連れションじゃなかったの? 優斗はウンコだったの?」
 留美が清香の対面から声を上げ、「多分連れションだと思うけどね」と清香が留美を見遣ると、彼女は腑に落ちない表情を見せた。



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