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妖精トム・ソーヤの繁活
【ファンタジー 官能小説】

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雪下めぐみ-5

そして、後僅かで3ヶ月経つというときに、あの大事故が起きた。
地方の公演中に一部のファンが興奮してステージに上がったことがあった。
雪下めぐみはそれでも笑顔で対応して握手などしていたが、その数がどんどん増えて、ある瞬間にステージの床が抜けたのだ。
そこは特殊なステージで地下3mの深さに掘ってあり、さまざまな仕掛けができるようになっていたのだが、その深さまでファンもろとも転落したのだ。3mというと2階から落ちるのと同じくらいであり、下がコンクリートの叩きになっていたので、無事に済むわけがない。
事実頭から転落して頭蓋骨陥没で死んだファンもいるし、全身打撲や骨折など重傷・重体者が続出した。
けれども雪下めぐみは軽傷すらなかった。
床は雪下めぐみ中心に凹んで崩れたのだ。だから彼女は転落したとき真っ先に落ちたし、その上にファンたちが重なって落ちて来る最悪のパターンのはずだった。
彼女は、固い床に衝突したとき自分の体の周りに球体のバリアができて、ボールのように弾んだことを覚えていた。それと殆ど同時にファンたちが鈍い音を立てて甲高い悲鳴と共に床に激突して行ったのだった。
スタッフは呆然と佇む雪下めぐみをいち早く別室に保護し、その直後救急車が来たので、病院には運ばれなかった。
そのとき会場にいたファンは雪下めぐみがスタッフに向かって、『私のことは良いから、ファンの皆さんを助けて下さい』と叫んでいたのを、ピンマイクを通して聞いていた。
その後の事務所の判断で、雪下めぐみは『怪我治療』のため1週間ほど休ませた。
さすがにこれだけの犠牲者を出して、本人が無傷では印象が悪いと判断したのだ。
当然どこの病院に運ばれたのかは、どんなに芸能記者たちが血眼に探し回っても、ついに嗅ぎ当てることはできなかったという。
1週間後『全快』した雪下めぐみがファンの前に姿を現した時、感動の拍手で迎えられた。
ワイドショーのコメンテーターは事故当時の画像を見ながら言った。
「この様子を見てもめぐみちゃんが真っ先に落ちて、ファンたちの下敷きになったのは疑いもない筈なのに、打撲・かすり傷・捻挫で済んだというのが奇跡に近い出来事なんですね。そして、事故直後救出に向かったスタッフたちに言った言葉の素晴らしいこと。あんなときには本心が出るものです。
まさしく彼女が真のアイドルである証しでしょう。彼女は虚像としてのアイドルではなく、人間としても気高い心を持ったアイドルだということが、すべてのファンに伝わったことでしょう」
この事件で、さらに彼女の人気が不動のものになったことは言うまでもない。
そして1週間の『休暇』の最中に彼女は妖精を生んだ。生んだときにトムが現れて赤ん坊を見せてくれたので、わかったのだ。
彼女はそのときテレビを見ていたが、番組をそのまま気づかずに見ていたという。
トムが現れて知らされ、初めて知ったのだ。
「この子は第3世代の妖精だよ。めぐみさんの卵子から作られたので、僕の遺伝子は入っていないんだ。だから僕に似たところは1つもないでしょう?
もう学習していると思うけど、僕のような第2世代の妖精は11才から12才の2年間で繁殖しなければ、第3世代の妖精はつくることができないんだ」
雪下めぐみは知っていた。トムのような第2世代の妖精は13才になると、第1世代と同じになり人間型の繁殖をする。
その場合も懐妊してもお腹は膨れないが、生まれる妖精は両親の遺伝子を受け継ぐ。
トムは妖精の仲間を増やす為に、自分の遺伝子の混ざらない第3世代の妖精を大量に作る必要があったのだ。
繁殖相手の候補を決めるのに妖精球がさまざまな条件を調べてトムに教えるらしい。
トムはそれに従って繁殖活動をしているだけなのだ。

     


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