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妖精トム・ソーヤの繁活
【ファンタジー 官能小説】

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田海マリア-1

歌手の田海マリアは20代後半になって自分が末期の癌であることを知った。奇跡の声の持ち主と言われ、数々のヒット曲を出していた彼女だったが、この場に及んですべての活動を停止し余命が尽きるのを待つ身となった。
病室を抜け出し屋上に出た彼女は、迫り来る死の恐怖に耐え切れず身を躍らせた。
5階建ての屋上からの投身自殺だった。即死するはずだった彼女は、何度か弾んだ後地面に立っている自分に気づいた。
訳がわからず病室に戻る途中、誰も自分に気づいていないことを知った。もしかすると自分はもう死んでいて、幽霊になったのかと思っていると、声がした。
「死んではいけません。マリアさん、あなたは助かります」
辺りを見回して声の主を捜すと、突然目の前に大きな虹色に輝くシャボン玉が現れた。
そのシャボン玉が萎むと中から10才くらいの少年が現れた。女の子のような綺麗な子供で、緑色の服装をしていた。
「坊やは、誰? 天使?」
「いえ、僕は妖精のトム・ソーヤです」
「あのトム・ソーヤ?」
「とは違うトム・ソーヤです。僕はマリアさんを助けることができるよ。マリアさんは病気でしょう?」
「そうよ。だって病院にいるものね」
「どんな病気でも治せるよ」
「そう……うれしいわ。私、冷え性で便秘気味なんだよ。それと頭痛もち」
「あはは……そんなのすぐ治っちゃうよ。僕のいうことを聞いてくれれば」
「まあ、嬉しい。ついでに末期癌なんだけど」
「まっきがんね。大丈夫だよ。永久歯が抜けたのは治せないけど、それと違うよね」
「違う、違う。それで全身転移してるんだけど。それも?」
「ぜんしんてんいね。きっとOKだよ。じゃあ、僕の言うこと聞いてくれる」
「いいよ。治してくれるなら、なんでも言うこと聞いちゃうよ。新しいゲームでも買ってほしいの」
「ううん、お金のかからないことだよ。僕をぎゅっと抱きしめてほしいの」
「なあんだ、そんなこと。簡単だよ。さあ、おいで、ぎゅーっとハグすれば良いのね」
トムが近づくととっても良い匂いがしてきた。そのにおいを嗅いでると……。
「駄目!」
マリアは思わずトムを突き放した。トムは驚いた。田海マリアは首を振っている。
「ど……どうしたの、マリアさん。ぎゅーっと抱きしめてくれるって……」
「駄目……わたしね。中学校の同級生が君くらいの子供持っているんだけど……。その君にいけないことしたい気分になったの。この匂いのせいかな?」
「僕のしてほしいのは、そのいけないことなんだよ。そうすれば、マリアさんは妖精の赤ちゃんを産むことができるんだ。その妖精の赤ちゃんがお腹にいる間に、マリアさんの体の悪いところを全部治るんだよ」
すると田海マリアは笑い出した。
「坊やとセックス? 残念ね、あはは……。きょう、私は安全日なの。だから絶対赤ん坊は生まれないんだよ。……ぁあぁ……その匂いなんとか止めてくれない?
変な気分になる」
「妖精は人間と違うからきょうが一番良い日なんだよ。ちゃんと妖精球が調べてくれたんだ。だから僕を抱いて」
「だめ……近づいちゃだめ……あぁぁ」
 


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