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今宵の君は一人だけ
【初恋 恋愛小説】

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今宵の君は一人だけ-3


そしてその頃伸汰と初雪はまだ抱き合っていた。まるで十二年間の空白を埋めるかのように強く…愛しく…
「初雪…逢いたかった…」
「…うちも…逢いたかった」
そしてゆっくりと体を離すと、今度は互いの唇を求めた。そして口づけをやめると互いのオデコとオデコを合わせながらクスクス笑い合った。何がおかしいでもなく、ただ笑い合った。
初雪は額に冷たいものを感じて伸汰のオデコを離して上を見てみると、月明りに照らされた雪がキラキラヒラヒラと輝かしく舞っていて、まるで舞台の上から小さな軽いフワフワした宝石でも落としてもらっているようだった。二人はその自然の景色に言葉を失いかけたが、伸汰が
「初雪…愛してる…オレと結婚してくれ」
初雪はびっくりしていたけど、ゆっくりと「はい…うちなんかでよければ…」と顔を真っ赤にして笑顔で言われて伸汰は「くぅ〜〜〜っ…たまんねぇ〜」と叫ぶなり初雪を持ち上げとくるくると二回転してから、ギュッと初雪を抱きしめた。
そしてゆっくり初雪を降ろすと、足元に咲いてあった四つ葉のクローバーを初雪の左手のお姉さん指にリングにして入れた。「今は…四つ葉だけど…式んときには本物を…その指に入れてやるから」伸汰が言うと初雪はクローバーを優しく握ってコクンと頷いた。
そして初雪は今思い出したように多久の姿を探した…が多久の姿はもうどこにもなかった。
初雪は伸汰に事情を説明すると
「多久…ありがとな…」と言った
そして二人はパン屋の中へと入っていった。


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