投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

気付かずの恋
【少年/少女 恋愛小説】

気付かずの恋の最初へ 気付かずの恋 13 気付かずの恋 15 気付かずの恋の最後へ

そして、大人になる-5


「嗚呼、生きてた……良かった」


「……約束、したからな」


「ふ、貴方こそ、守るタチだっけ?」


 そう言い泣きっ面で微笑み、再び縋り付く彼女。
愛しい、
愛しい、
愛しい、
壊してしまいたいほど。
どうしてこんなに……


「ずっと、悔やんでたから」

「何を」


出た声が思った以上に掠れていて、自分でも驚いた。


「貴方の『不安』に、答えられなかったことを、ね」


「不安―…?」


「―…貴方が私に言った科白(せりふ)は、不安から言わせた言葉だったから」

「―――!」



本当は、分かっていた。



『――ヤヨ、此処を出るか。』



 あれは、俺の不安な気持ちが言わせた譫言(うわごと)。
分かっていたのに。



「私の『不安』は『行けない』と言ったの」

「……そうか」






【―――先が見えない…。】





そんな漠然とした幼い不安感に、俺たちはすっかり支配されていたんだな。


「あ、それ変わらないのね。」

「あん?」

「皮肉な笑い」

「……あぁ」

「ふ、『あぁ』の虫もね」


「お前は……怖くないのか」

「誰が?」


「俺が」


 見上げる、怪訝な顔。
それから、またフ、と笑う。その表情が、あまりにも昔と変わらなくて―…
俺は腕に力を込めた。


気付かずの恋の最初へ 気付かずの恋 13 気付かずの恋 15 気付かずの恋の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前